2019(令和元)年6月5日に女性活躍推進法等の一部を改正する法律が公布され、労働施策総合推進法30条の2によって事業主にはパワハラの防止措置が義務付けられました。同条の施行は2020(令和2)年6月1日でしたが、経過措置により中小企業においては2022(令和4)年3月31日までは努力義務とされていたところ、いよいよ本年4月より中小企業を含む全ての事業主において一律に、セクハラ、マタハラ、パワハラの防止措置が義務付けられることとなりました。厚生労働省は、中小企業の事業主向けリーフレットを作成し、周知に努めています。大企業においても、子会社等のグループ内中小企業において対応漏れがないか、また、実施しようとしている防止措置の内容に不適切な点はないか等、ご確認いただけるとよいと思います。
パワハラ防止措置の項目は、①事業主の方針等の明確化及び周知・啓発、②相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応、及び④併せて講ずべき措置です。中小企業において一番の悩みどころは、おそらく②相談窓口の設置でしょう。グループ企業であれば、グループ全体の相談窓口も一つの選択肢として従業員に提示できたり、窓口対応について適宜親会社等の指導を仰いだりすることもできるでしょう。しかし、そうではない場合は、相談窓口担当者を誰にするか、また、窓口で相談を受け付けた後の適切な情報管理をどのように行うかは、非常に難しい問題となります。特に相談窓口担当者が誰であるかは、相談窓口が従業員から信頼を獲得するにあたり、とても重要な要素ですので、安易に社長等とすることは避けるべきです。また、中小企業においても、少なくともセクハラとマタハラの相談窓口は既に設置されているはずであり、もし全く利用実績がないとのことであれば、相談窓口の周知が不十分であるか、又は信頼を獲得できていない可能性がありますので、この際に見直しを図るとよいでしょう。特に小さな規模の組織では、相談窓口を利用する際の一番の懸念は「相談したことを知られるのではないか」ということだと思われますので、社内窓口だけでなく、社外窓口の設置も前向きに検討することが望ましいと考えます。もっとも、社外窓口を設置しても、社外窓口では対応が完結せず、社内と連携して事実調査等に進んでいくケースも十分想定されますので、社外窓口から社内に対し、相談があったこと等の報告がなされる際の情報共有・情報管理体制(社外窓口からの報告先を誰にするか等)についても予め十分に検討しておくべきです。
厚生労働省は、ハラスメントに関して総合的に取りまとめたパンフレットも公開しています。本年1月に作成されたものでは、本年4月以降の改正育児・介護休業法の施行を踏まえ、本年4月からは本人又は配偶者の妊娠・出産等の申出をしたことを理由とする、本年10月からは出生時育児休業の申出・取得又は出生時育児休業期間中の就業を申出・同意しなかったこと等を理由とする不利益取扱いが禁止されることが盛り込まれています。
※厚生労働省リーフレット「2022年(令和4年)4月1日より、『パワーハラスメント防止措置』が中小企業の事業主にも義務化されます!」:こちら
※厚生労働省パンフレット「パワーハラスメント対策が事業主の義務になりました! ~~セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対応をお願いします~~」(本年1月作成):こちら
________________________________________________________
★関連テーマの講演を開催します★
講師は当コラム担当の町田弁護士です。ぜひご参加ください
▼労働法学研究会・例会第2878回
『企業におけるパワハラ防止措置の義務化への対応 実務ポイント解説』