国税庁が本年1月、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表したこと本コラムでもお伝えしました(参照)。
在宅勤務における交通費や在宅勤務手当の、健康保険制度及び厚生年金保険制度における取扱いについては、本年3月31日付で、厚生労働省がテレワーク総合ポータルサイトのQ&Aにおいて、①テレワークを導入した際の交通費や在宅勤務手当は社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含めるべきでしょうか、②在宅勤務手当のうち実費弁償に当たるようなものである場合は社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含める必要はないとのことですが、どのようなものが該当するでしょうか、とのQを設定して考え方を示しています。さらに、この内容は、本年4月1日付で発出された厚生労働省年金局事業管理課長による事務連絡「『標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集』の一部改正について」にも盛り込まれています。
社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる「報酬及び賞与」(以下「報酬等」)や「賃金」は、賃金、給料、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのものをいい、事業主が負担すべきものを労働者が立て替え、その実費弁償を受ける場合には、労働の対償とは認められないため、報酬等や賃金に該当しないこととされています。
上記①については、テレワーク対象者が一時的に出社する際に要する交通費(実費)に関し、当該労働日における労務提供地が自宅とされている中で、業務命令により出社する場合、その移動にかかる実費を企業が負担する場合には、原則として実費弁償に当たるため、算定基礎となる報酬等や賃金には含まれないとされています。また、在宅勤務手当については、支給要件や支給実態を踏まえた判断となるものの、渡し切りのもの(精算を要しないもの)は算定基礎となる報酬等や賃金に含まれますが、パソコン購入費用や通信費等について実際に生じた費用を企業が手当として支払うもので、それが業務遂行に必要な費用であれば、実費弁償に当たるものとして、算定基礎となる報酬等や賃金には含まれないとされています。
上記②については、労働者へ貸与する事務用品等の購入費用や、在宅勤務に通常必要な通信費・電気料金、企業が業務上必要であると認め勤務時間内にレンタルオフィスを利用した場合の利用料金が精算される場合(いずれも、企業が仮払いし後日精算する場合と、労働者が立替払いし後日精算する場合の両方を含みます。)が、算定基礎となる報酬等や賃金に含まれない例として示されています。また、電気料金等、業務で要した費用と生活に要した費用が一括で請求される費用の実費弁償分の算出方法においては、国税庁が公表した「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」で示されている計算方法等に基づくことが考えられるとされています。
国税庁がFAQを公表した際には、テレワーク・在宅勤務に関する費用と社会保険料・労働保険料等の算定基礎の考え方についても行政の見解を示してほしいとの声が上がっていました。これに応えるものとして、実務上、多くの企業にとって参照されていくものと思います。
※テレワーク総合ポータルサイト:こちら
※2021年4月1日付事務連絡「『標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集』の一部改正について」(厚生労働省年金局事業管理課):こちら