国税庁は本年1月、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表しました。
このFAQでは、①従業員に支給した在宅勤務手当は給与課税の対象となるか、②在宅勤務用にパソコン等の事務用品を支給した場合は給与課税の対象となるか、③従業員との間で在宅勤務に通常必要な費用を精算する場合に、給与課税の対象とならないのはどのようなときか、④在宅勤務に要する通信費(電話料金-通話料・基本使用料、インターネット接続に係る通信料)を会社が支給する場合の業務使用部分の計算方法、⑤従業員本人が業務に使用するスマートフォンに係る通信費の業務使用部分に関する課税関係、⑥在宅勤務に要する電気料金(基本料金・電気使用料)を支給する場合の業務使用部分の計算方法、及び⑦従業員が業務のためにレンタルオフィス代等を立替払いし、会社との間で精算した場合、給与課税の対象となるか、について国税庁の回答が示されています。
回答は要旨、①在宅勤務手当が渡し切りではなく、実際に要した費用の相当額を精算するものであれば給与課税の対象とならない、②会社所有の事務用品を貸与するものではなく、支給した事務用品の所有権が従業員に移転する場合には従業員に対する現物給与として課税対象となる、とされ、③~⑥では、一連の費用のうち業務使用部分を具体的にどのような考え方や算定式で算出すべきかが示されています。また、⑦については、従業員が業務のために実際に利用したレンタルオフィス代の領収書等を会社に提出して代金が精算されるものについては、給与課税の対象とならないとされています(企業が先に仮払いをし、従業員との間で事後精算する場合であっても同じです。)。
在宅勤務が普及する一方で、通勤が減ったことにより通勤手当の支給を縮小する動きがある中、通勤手当であれば一定額まで非課税となるものの、在宅勤務手当は同様の取扱いとならないおそれから、企業の中には、通勤手当の支給削減により生じた財源を在宅勤務手当に振り分けることを躊躇する向きもあったようです。今回のFAQの公表は、在宅勤務に向けた環境整備を促す一環として意義のあるものといえるでしょう。もっとも、FAQで示されている業務使用部分の算定方法は煩雑であり、特に従業員数の多い会社で一人ずつ算定を行うことにはかなりの労力を割かれることが見込まれます。
※在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係):こちら