「改正労働基準法の成立-消滅時効期間の整理など」

 労働基準法の一部を改正する法律が2020年3月27日、参議院にて可決成立しました。これは、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号、以下「改正民法」)により短期消滅時効が廃止されたことに伴い、賃金等請求権に関する労働基準法上の消滅時効の在り方の整理が必要となったことに伴う改正です。改正民法の施行に合わせて2020年4月1日施行予定で、同日以降に発生した請求権について適用されます(施行日前に締結した労働契約に基づく請求権であっても、2020年4月1日以降に発生したものであれば適用される点に注意が必要です)。
 現在の労働基準法115条は、賃金や災害補償その他の請求権の消滅時効期間を2年としています。民法は、「月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」の消滅時効期間を1年間と定めていましたので、民法の特別法である労働基準法が、賃金という重要な権利について労働者保護の見地から消滅時効期間を2年に延ばすという構図になっていました。しかし、改正民法では消滅時効期間が5年以上に統一されたため、これに伴い労働基準法も改正すべきかどうか、改正民法の成立(2017年6月)の約半年後から議論が進められていました。消滅時効期間が延びることによる使用者側への影響は甚大で、労使の激しい攻防により議論はなかなか着地点を見いだせず、2019年12月27日にようやく労働政策審議会の建議にこぎ着け、改正民法の施行ぎりぎりで改正労働基準法が成立しました。
 主な改正点は以下のとおりです。

 

改正項目 改正後の条文 現在 改正後
賃金請求権の消滅時効期間 115条・143条 2年 5年

(当分の間3年)

退職手当請求権の消滅時効期間 115条 5年 5年
災害補償その他の請求権の消滅時効期間

(上記2つの請求権を除く)

115条 2年 2年
付加金の請求期間 114条・143条 2年 5年

(当分の間3年)

記録の保存 109条・143条 3年 5年

(当分の間3年)

 

 消滅時効期間の起算点は、これまで条文上明記されていませんでしたが、従来からの解釈・運用を踏襲し、「これを行使することができる時」(改正後の115条)、すなわち客観的起算点を基準とすることが明確にされました。
 また、「当分の間」とされている部分を含め、改正労働基準法施行5年経過後に、施行状況を確認しつつ見直し等の必要な措置が講じられる予定となっています。

(第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

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(2020年3月30日 更新)

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