労働政策審議会(以下「労政審」)は、2019(令和元)年12月25日、高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について、職業安定分科会における検討結果をまとめた報告書(以下「労政審報告書」)に基づき厚労大臣へ建議しました(労審発第1125号)。これに基づき、厚労大臣は、雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱を作成し労政審へ意見を求め、2020(令和2)年1月8日、労政審職業安定分科会雇用対策基本問題部会において概ね妥当とされました。雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱には、雇用保険法のほか、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、高年齢者雇用安定法、労働施策総合推進法、労働者災害補償保険法などの改正案が含まれています。
労政審報告書では、高年齢者の雇用・就業機会の確保に関し、現在65歳までの雇用に関して選択的措置とされている、定年の引上げ、継続雇用制度又は定年の定めの廃止といった雇用による措置のほか、雇用によらない措置として、①特殊関係事業主以外の企業への再就職に関する制度の導入、②フリーランスや起業による就業に関する制度(個人とのフリーランス契約への資金提供、個人の起業支援など)の導入、③社会貢献活動への従事に関する制度(個人の社会貢献活動参加への資金提供)の導入といった新たな措置を設け、過半数代表者等の同意の下に、雇用による措置に代えて導入することを認めるとの方向性が示されています。また、雇用による措置も雇用によらない措置も、「60歳まで雇用していた事業主が、法律上、措置を講ずる努力義務を負うと解することが適当」とされています。なお、現在、65歳までについては希望者全員を対象とすることが求められていますが、65歳から70歳までの措置に関しては、体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況がより多様なものなることから、労使が合意で定めた基準により対象者を限定することを可能とすべきとされています。
以上のような方向性を盛り込んで高年齢者雇用安定法が改正される見込みであり、上記法律案要綱では、同法改正の施行日は2021(令和3)年4月1日と予定されています。
(第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子)
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