「今年の振り返り」

4月に始まったこのコラム、今年の最終回を迎えました。今年1年を振り返ってみたいと思います。

今年は、4月に時間外労働の上限規制や年次有給休暇の5日の付与義務などが施行されました。来年4月には、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(いわゆる同一労働同一賃金)の施行が控えており、引き続き働き方改革関連法による法改正への対応が継続した年となりました。特に派遣労働者に関する同一労働同一賃金は、派遣元・派遣先の企業規模を問わず来年4月施行ですので、派遣元では労使協定の締結などを目下対応中と思います。

今年成立した主な法改正としては、パワハラの防止措置義務の導入を含む労働施策総合推進法改正が挙げられます(来年6月1日施行)。防止措置義務の内容を定める「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」は、12月20日にパブリックコメントの募集が締め切られ、報道によれば、同月23日開催の労働政策審議会にて正式決定されたとのことです。今年は、ここ数年と比べると重要な法改正が少なかったですが、副業・兼業の促進に向けた法整備や、来年4月1日の民法(債権法)改正までに賃金等の労働基準法に基づく債権の消滅時効の在り方について議論がまとまるのか、さらには、65歳以上の労働者の就業促進がどのような形で実現されるのかなど、来年も重要な法改正が続くことと予想されます。

最高裁判決については、実務に大きな影響を与えるようなものは、今年は特にありませんでした。労働契約法20条に関するメトロコマース事件や日本郵便(東京・大阪)事件などについて、来年4月の同一労働同一賃金の施行までに最高裁の判断が示されるのか注目されます。

このほか、今年は台風などの大規模な自然災害が相次ぎ、それによって企業の人事労務管理も少なからぬ影響を受けました。

来年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。オリンピック・パラリンピックの開催の前後を通じたスムーズな事業運営のため、テレワークなどを含む柔軟な働き方が一層進展していくことと思われます。

本コラムでは、実務の動向をいち早くキャッチアップし、皆様に新鮮な情報をお届けできるようにしてまいります。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

(2019年12月24日 更新)

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