パワハラ防止措置義務の具体的内容を定める指針の策定に向けて、厚労省労働政策審議会雇用環境・均等分科会(以下「労政審」)で議論が続いています。
先日、2019年10月21日開催の労政審での配付資料という形で、指針の素案が公表されました。素案の項目は、順に、①はじめに、②職場におけるパワーハラスメントの内容、③事業主等の責務、④事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容、⑤事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容、⑥事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容、⑦事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等のからの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容、となっています。
パワハラは、適法な業務指導との線引きが難しいと指摘され続けてきました。素案の②の部分では、そのような指摘に応えるべく、条文上のパワハラの定義を構成する「職場」「労働者」「優越的な関係を背景とした」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」「就業環境を害すること」の意味内容やこれに含まれるものの例示がなされ、さらに、従来からのパワハラ6類型について、「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」が示されています。しかし、「該当しないと考えられる例」に関して言えば、敢えて指針で挙げる必要があるとはいえないような当たり前のものも多く(「誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること」は暴行・傷害(身体的な攻撃)には該当しない等)、判断基準の明確化には至っていないように思われますし、「個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、また、次の例は限定列挙ではないことに留意が必要」ともされており、かえって、パワハラ該当性判断の難しさが滲み出てしまっているように感じられるところです。
さらに、労働者側からは別の観点からも批判されており、日本労働弁護団は、指針の素案が公表された2019年10月21日当日に「パワハラ助長の指針案の抜本的修正を求める緊急声明」を出しました。
パワハラ防止措置義務に関する改正法は、当初は2020年4月1日施行、2019年内に指針公表と予想されていましたが、2019年10月28日開催の労政審では、2020(令和2)年6月1日施行(中小企業におけるパワハラ防止措置の努力義務の終了日は2022(令和4)年3月31日)とする政令案が検討されていますので、もしかしたら、当初の見込みよりも指針確定までに時間がかかるかもしれません。
(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)
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