厚労省は、2019年9月27日、「令和元年版 労働経済の分析」を公表しました。労働経済の分析(通称「労働経済白書」)は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析するもので、今回で71回目の公表となります。
令和元年版は、副題を「人手不足の下での『働き方』をめぐる課題について」とし、人手不足下での職場環境では、労使共に、「働きやすさ」の毀損と「働きがい」の低下を実感しているとの見方を前提に、「働きやすさ」と「働きがい」の2つの観点から企業の様々な雇用施策との関連性が分析されています。
「働きやすさ」の向上には、男女・年齢を問わず、「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が必要と考える労働者の割合が最も多く、次いで、「有給休暇の取得促進」、「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」が多くなっています。また、これらは、「働きがい」が高い労働者の勤務先で実施されている雇用施策でもあります。すなわち、「働きがい」を向上させるには、その前提として「働きやすさ」の基盤がしっかりと構築されていることが重要といえます。
このほか、「働きがい」が高い労働者は、「仕事を通じて、成長できている」「自己効力感(仕事への自信)が高い」「勤め先企業でどのようにキャリアを築いていくか、キャリア展望が明確になっている」等の認識を持つ頻度が高いことが紹介されています。そして、「指導役や教育係の配置(メンター制度等)」「キャリアコンサルティング等による将来展望の明確化」「企業としての人材育成方針・計画の策定」等の実施が「働きがい」の向上につながると推察され、労働者が成長実感を得るには、業務上の目標達成の難易度をどの程度の設定するのがよいか、上司からのフィードバックの頻度やタイミングはどのようにするのがよいか、といった分析や、キャリア展望に関する労使間の意思疎通の機会、ロールモデルとなる先輩社員の有無との関連性、管理職の「働きがい」と登用機会の公平性、「休み方」(リカバリー経験)や仕事と余暇時間の境目をマネジメントする能力(バウンダリー・マネジメント)との関連性などの分析結果が示されています。
「働き方改革」の方向性が多角化する中、企業にとって示唆に富む内容であると感じます。
(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)
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