内閣府は、平成20年以降不定期で、内外の経済動向の分析を「政策課題分析シリーズ」として作成・公表しています。令和元年7月24日付で公表された第17回のタイトルは「日本のフリーランスについて-その規模や特徴、競業避止義務の状況や影響の分析-」です。ここでは、フリーランスの規模や特徴、競業避止義務の状況や労働移動、賃金に与える影響について、アメリカと比較しつつ分析されています。
日本では、これまでフリーランスに関する直接的な公的な統計は、定義付けが難しい等の理由により公表されていませんでした。今回、アンケート等の実施により調査したところ、フリーランスは副業として従事する者も含め推計306万人~341万人程度いることがわかりました。この人数の幅は、「フリーランス」の定義の設定によるもので、就業形態を自営業主又は内職とする者を対象に、雇人がいる者、店を構えている者及び農林水産業の者を除いた場合は約306万人となり、これに、いわゆる一人社長(法人成りをして従業員が1人のみの者)等を加える場合は約341万人となります。また、自営業主(雇人なし)の数は全体として減少傾向にありますが(総務省の労働力調査より)、「雇用的自営業者」と称される特定の発注者に依存する自営業主数は増加傾向にあり、そのシェアは1985年の18.7%から2015年は41.5%に増えていることから、フリーランスの動向把握の重要性が指摘されています。
競業避止義務(「退職後・契約終了後に、競合企業への転職、競合企業の立上げを制限・禁止する契約」と定義)の有無に関しても同様にアンケート調査等が行われ、雇用者では「ある」が13.9%、「あるかもしれない」が10.5%であるのに対し、フリーランスは「ある」が4.4%、「あるかもしれない」が4.2%でした。また、競業避止義務を認識したタイミングが契約締結よりも前であるフリーランスに関しては、見返りとしての“賃金”プレミアムがあることが確認され、競業避止義務について事前の認知と交渉がフリーランスの処遇の向上のために重要であることが示唆されると指摘されています。
なお、「フリーランス」という用語は、中世のイタリアやフランスにおいて、報酬に納得して戦いに意義を認めることができればどの君主の下でも戦った傭兵部隊に遡り、傭兵は「フリー・ランス」すなわち「自由な槍」と呼ばれていたことに由来するそうです。
(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)
★当コラム担当の町田先生のセミナーが開催されます★
ー働き方改革関連法に対応した就業規則の見直しセミナー【全2回】ー
◇【1】 就業規則改定-働き方改革関連法関係/11月11日(月)【オンライン&オンデマンド対応】
◇【2】 就業規則改定-その他規定の見直し総点検-」/12月9日(月)【オンライン&オンデマンド対応】
※2回ともお申込みの方には『参加費の割引』がございます。詳しくはご案内ページの参加費の欄をご覧ください。
※いずれかの1回のみの受講も可能です。