2025年4月からの改正対応-要介護状態の判断基準、継続雇用制度について
2025年4月に向けて、目下、育児・介護休業法の改正対応を進めている企業が多いと思います。この2月にかけて、厚生労働省からの情報発信も進み、「育児・介護休業等に関する規則の規定例」の詳細版や、新たなパンフレット「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」等も公表されました。
育児・介護休業法の4月施行分の改正項目は、育児よりも介護に関するものの方が新たな実務対応を要しますが、それに際し、介護と仕事の両立に関する制度・措置を利用できる「対象家族」や「要介護状態」について改めて確認することも重要です。「介護休業」に関しては、法の中で「労働者が、第三章に定めるところにより、その要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業をいう」と定義付けられ(育児・介護休業法2条2号)、「要介護状態」や「対象家族」の定義も法の中で示されています(同条3号、4号)。
これに関し、厚生労働省が設置した「介護休業制度等における『常時介護を必要とする状態に関する判断基準』の見直しに関する研究会」の報告書が1月28日に公表されました。この見直しは、育児・介護休業法の改正法案に係る衆参の附帯決議等で、これまでの判断基準は主に高齢者の介護を念頭に作成されているため、「子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合には解釈が難しいケースも考え得ることから、早急に見直しの検討を開始し、見直すこと」とされたことを受けたものです。
新たな判断基準では、対象家族には、高齢者だけでなく「障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む。ただし、乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まない。」ことが明記され、判断方法自体も一部修正されています(対象家族の範囲や「要介護2以上」については変更がありません。)。改正育児・介護休業法に関する施行通達も、この新たな判断基準に基づいた内容となっています。
次に、同じく4月に変更があるものとして、高年齢者雇用安定法(高年法)に基づく継続雇用確保措置があります。これは、4月に高年法の改正法が施行されるわけではなく、改正高年法(平成25(2013)年4月施行)で設けられた経過措置が本年3月31日をもって終了するというものです。この改正高年法は、労使協定で継続雇用の対象者選定基準を設ける仕組みを廃止し、希望者全員を対象とすることを事業主に求めるものですが、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の者については対象者選定基準を設けることを認めていました。この経過措置がいよいよ終了しますので、4月以降、定年制の廃止、65歳までの定年の引上げ、又は、希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかを講じる必要があります。引き続き継続雇用制度を選択する場合は、対象者選定基準の適用の排除等について、必要に応じ、3月31日までに就業規則等の関係規程を改正することが必要です。
参考資料~
※厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」(詳細版):こちら
※厚生労働省パンフレット「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」:こちら
※厚生労働省Webサイト「介護休業制度等における『常時介護を必要とする状態に関する判断基準』の見直しに関する研究会報告書を公表します」:こちら
※厚生労働省リーフレット(経過措置に基づく基準対象者に限定した継続雇用制度を利用している事業主の皆さまへ):こちら
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