2023年4月に成立したフリーランス新法(正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、略称「フリーランス・事業者間取引適正化等法」)の施行が2024年11月1日に迫っています。現在、対応準備に追われている会社も少なくないと思われますが、政府には新法の周知不足の懸念もあるようで、先日から電車内でも新法の電子広告を見かけるようになりました。
「フリーランス」は法律用語ではなく、新法の中では「特定受託事業者」とされ、これには、①個人であって、従業員を使用しないもの(従業員のいない個人事業者)と、②法人であって、1人の代表者以外に他の役員がおらず、従業員もいないもの、が含まれます。ここでいう「従業員」は、週所定労働時間20時間以上で、かつ31日以上の継続雇用が見込まれる労働者(直接雇用労働者だけでなく、派遣労働者を含む。同居親族を除く)のことです。従業員を使用しているかどうかは、形式的に判断するとされています。なお、政府が2021年3月に策定した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」では、「実店舗がない」こともフリーランスの該当要件の一つとされていましたが、新法では、実店舗の有無は問いません。新法に対応したガイドラインの改定内容は10月18日に公表されました。
フリーランス新法の適用対象となるのは、物品の製造・加工、情報成果物の作成、又は役務の提供に関する業務委託取引です。役務の提供には、例えば、フードデリバリーも含まれますし、企業が弁護士(上記の「フリーランス」に該当する者)に訴訟の代理を委託することも含まれます。
フリーランス新法上の義務を負う側、すなわち業務委託者(発注者)側の組織規模要件はなく、上記の「フリーランス」に対し上記の「業務委託」をする場合、少なくとも、口頭伝達以外の方法による取引条件の明示は、必ず行わなければなりません。さらに、発注者が組織(従業員や複数の役員のいる企業や、従業員を雇う個人事業主などの、新法上の「特定業務委託事業者」)である場合は、受領日から60日以内のできるだけ短い期間内での報酬支払や、ハラスメント対策に係る体制整備義務が加わり、さらに、業務委託期間(1か月以上、6か月以上)に応じ、禁止行為(受領拒否、報酬の減額等)、育児介護等と業務の両立に対する配慮、中途解除等の事前予告・理由開示義務などが加わります。
フリーランス新法への対応の出発点は、上記の「業務委託」取引の相手方が新法にいう「フリーランス」に該当するかどうかの確認、特に、個人事業主である場合に従業員を使用しているか否か等の確認になるでしょう。これは下請法の資本金要件などと異なり、外部から客観的に確認できるものではなく、また、随時状況が変わり得るものです。これについて、公正取引委員会のQ&A(後掲)では「受注事業者の『従業員』の有無の確認は、口頭によることも可能ですが、発注事業者や受注事業者にとって過度な負担とならず、かつ、トラブル防止の観点から、記録が残る方法で確認することが望まれます。」とされ(Q7。なお、確認の時点は「業務委託をする時点」、つまり、発注時です)、また、受注者側が事実と異なる回答を行い、発注者側がそれを信じて対応した場合も、客観的にみて法違反の状態があれば、指導・助言(行政指導)を行うことがあるとされています(Q13)。
※公正取引委員会 フリーランス法特設サイト:こちら
※(政府)法の説明資料:こちら
※公正取引委員会Q&A:こちら
※厚生労働省Webサイト「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」:こちら
※フリーランス法ガイドライン 新旧対照表:こちら
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