厚生労働省(労働基準局)において「労働基準関係法制研究会」が設置され、2024年1月から現在まで、計7回の会合が開催されています。
この研究会は、①「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書(2023年10月20日公表)を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理、②働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等の検討、についての調査・検討を行うものとされています。②は、働き方改革関連法第12条において、「政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、新労基法第36条の規定について、その施行の状況、労働時間の動向その他の事情を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」と定められていることをも受けたものです。
第1回研究会(1月22日開催)では、冒頭において労働条件政策課長より、「労働基準法制全体の根本にわたるところから含めまして皆様方の忌憚のない御意見を賜りたいと思っております。労働基準法制といってもいろいろ多岐にわたる法制でございますけれども、皆様方のお知恵をかりましてよりよい法制にしていきたいと思っております」との挨拶がされました。
第6回研究会(4月22日開催)では、第5回までの議論の状況を整理した資料(「これまでの議論の整理」)が配付されていますが、これを見ると、確かに挨拶のとおり、労働基準法による規制はどのように在るべきかといった根本にわたる部分も含めて様々な議論がなされているようです。
具体的には、①労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇、②労働基準法の「事業」について、③労働基準法の「労働者」について、④労使コミュニケーションについて、の4つを軸としています。そして、①では、最長労働時間規制、労働時間からの解放の規制及び割増賃金規制について、②では、「事業」という概念や「事業」単位での規制の妥当性について、③では、労働者性の判断基準と予見可能性、労働基準法以外の法令の対象範囲、アルゴリズムによる使用者の指揮等新しい労働者概念及び家事使用人について、④では、集団的労使コミュニケーションの意義と、主に過半数代表者について議論がされています。
①に関しては、休憩・休日・年次有給休暇・勤務間インターバルが「労働から解放された時間」(労働解放時間)としてまとめられているところがやや新しく感じられ、また、最長労働時間規制の在り方に関して、上限規制の意義を、健康確保という観点から捉えるのか、それとも、仕事と生活の両立という観点も含めるのか整理すべき、であるとか、労働時間が短ければいいものではなく、労働者のキャリアアップやスキルアップ等も考慮すべきとする意見などが出ています。
④に関しては、過半数代表者の在り方について、そもそも過半数代表者は、その選任・同意により法規制が解除されるという点において「使用者のメリットが多いため、労働者にとって、過半数代表者を適正に選出するインセンティブがどこにあるのかという点が根本的課題」である、「労働者にとって任務・意義・メリットが不明瞭であり、また、労働者の集団としての意見集約過程も定まっておらず、自発的な選出に結び付かない」、「任期付きにした方が、任期中の責任の所在が明確になることや、一定の期間があった方が、役割の理解や育成にも馴染むなど、良い影響がある」といった意見が注目され、これは現場の率直な感覚とも合致していると思われます。
このような議論が今後どのように集約されていくのか、そして、その集約の後、労働基準法制は抜本的な改革に至るのか、実務に与える影響は非常に大きく、今後も動向を注視していきたいと思います。
※厚生労働省「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書(2023年10月20日公表):こちら
※厚生労働省 労働基準関係法制研究会:こちら
※労働基準関係法制研究会 第6回 資料1「これまでの議論の整理」:こちら
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