「女性活躍推進法に基づく行動計画策定・情報公表義務の拡大」

 女性活躍推進法は、日本の女性雇用の現状を踏まえ、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するべく、2015(平成27)年に10年間の時限立法として制定され、2016(平成28)年4月に施行されました。これにより、常時雇用労働者数301人以上の企業に事業主行動計画の策定や女性の活躍に関する情報公表が義務付けられるとともに、政策的なインセンティブの付与として、女性活躍推進について優れた取組みを行う一般事業主の認定(えるぼし認定)が導入されました。

 

 2019(令和元)年5月、女性活躍推進法の改正法が成立し、常用労働者数101人以上の企業にも行動計画策定義務及び情報公表義務が拡大されるとともに、「えるぼし」よりも水準の高い「プラチナえるぼし」が創設されるなどしました。このうち、常用労働者数101人以上の企業への義務拡大は、2022(令和4)年4月1日より施行され、これにより改正法は全面施行されることとなります。

 

 一般事業主行動計画の策定義務への対応は、①自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、②一般事業主行動計画の策定・社内周知・社外公表、③労働局への届出、④取組みの実施・効果の測定という流れで行うことが予定されています(後掲の厚生労働省パンフレットやリーフレットを参照)。②に関し、101人以上300人以下の企業では、所定の数値目標に関する項目から1つ以上定めることが必要となります(301人以上の企業は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」及び「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の区分ごとに1つ以上の項目を選択)。

 

 また、女性の活躍に関する情報公表義務に関しては、101人以上300人以下の企業では、上記区分の全項目の中から1項目以上を選択して公表する必要があります(301人以上の企業では上記区分ごとに1項目以上を選択して2項目以上を公表)。

 

 公表義務違反や虚偽公表については、行政による是正勧告に従わなかった場合に企業名公表の制裁が予定されています。なお、100人以下の企業については、行動計画策定も情報公表も努力義務ではありますが、虚偽公表は同様に制裁の対象となります。

 

 2022(令和4)年3月3日の参議院厚生労働委員会では、後藤厚生労働大臣が、男女間賃金格差そのものの開示を充実する制度の見直しについても具体的に検討し速やかに着手する方針を表明し、近い将来において女性活躍推進法が改正されることが予想されます。また、金融庁においても、有価証券報告書での企業の多様性確保に係る指標として、女性管理職比率、男性育休取得率、男女間賃金格差などの開示を求める方向で検討を進めることが予定されているようです。女性活躍推進法において設定された義務は、自社による問題の把握・分析と状況改善のための自主的な取組みを促すものですが、このような取組みは今後一層重要性を増していくことになりそうです。

 

五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

※厚生労働省パンフレット「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」:こちら

 

※厚生労働省リーフレット「令和4年4月1日から女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届出、情報公表が101人以上300人以下の中小企業にも義務化されます」:こちら

 

※厚生労働省パンフレット「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定 プラチナえるぼし認定のご案内」:こちら

 

(2022年3月31日)

 

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