「70歳までの就業機会の確保措置に関する指針・パンフレット等の公表」

 高年齢者雇用安定法の改正法が本年3月31日に成立し、2021(令和3)年4月1日施行予定であることを、以前、本コラム「高年齢者の就業機会の確保・複数就業者のセーフティネットの整備に関する法改正」でご紹介しました。
 

 施行に向け、本年10月30日付で「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」(厚生労働省告示第351号)が告示されました。また、70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき措置(努力義務)に関して、「パンフレット(簡易版):高年齢者雇用安定法改正の概要」、「パンフレット(詳細版):高年齢者雇用安定法改正の概要」、「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係)」等が厚生労働省のWebサイトで公表されました(パンフレット(詳細版)に上記指針も掲載されています。)。
 

 高年齢者就業確保措置導入の努力義務を負う事業主は、①定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、及び、②65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主です。多くの企業が②に該当するものと思われます。なお、事業主の規模に応じた適用猶予・適用除外等はありません。
 

 高年齢者就業確保措置の概要は下表のとおりです。
 

雇用に

よる措置

70歳までの定年引上げ
定年の廃止
継続雇用制度の導入 自社での雇用
特殊関係事業主での雇用
特殊関係事業主ではない他社での雇用
雇用に

よらない措置

(創業支援等措置)

高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に 業務委託契約を締結する制度の導入
次の事業に従事できる制度の導入 事業主が自ら実施する社会貢献事業
事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 
 

上記Q&Aでは、いずれを導入する場合も、「退職に関する事項」(労働基準法89条3号)に該当するため、就業規則への反映が必要であるとされています。また、雇用によらない措置(創業支援等措置)を講ずる場合は、創業支援等措置の実施に関する計画を作成し、過半数代表者等の同意を得る必要があります(ハローワークへの届出は不要です。)。
 

 上記Q&Aによれば、2021(令和3)年4月1日の改正法施行時点で上記のいずれかの措置が導入されていない場合であっても、直ちに行政指導の対象となるものではないようですが(上記Q&Aの1②)、いつまでも「検討中」に留めることはできず(上記Q&Aの1③には「改正法では、高年齢者就業確保措置を講ずることによる70歳までの就業機会の確保を努力義務としているため、措置を講じていない場合は努力義務を満たしていることにはなりません。」と記載されています。)、また、当面65歳に達する労働者がいない場合であっても措置を講じるよう努めなければならないものとされています(上記Q&Aの1⑦)。
 

 どのような措置が自社の実情に沿った現実的なものであるかは、昨今の新型コロナウイルス感染拡大による雇用情勢不安定下では見通しが立ちづらいものといえ、導入に向けた検討や手続の実施は、企業にとって相応の負担となるものと言わざるを得ませんが、まずは、上記パンフレット(詳細版)に目を通し、今後何をすべきかを把握するしておくところからスタートするのがよいでしょう。

 

第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

(2020年11月12日)

※厚生労働省Webサイト「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」:こちら

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