このコラムでは、今年2月に「高年齢者の雇用・就業機会の確保に向けた動き」と題して、高年齢者雇用安定法が改正予定であることをお伝えしました。その改正を含む「雇用保険法等の一部を改正する法律」が3月31日、参議院にて可決成立し、同日、公布されました(令和2年法律第14号)。高年齢者雇用安定法の改正内容は、定年の廃止、定年の引上げ、又は、継続雇用制度の導入という現在の高年齢者雇用確保措置の実施対象を70歳まで引き上げることを骨子とするものです。ただし、65歳から70歳までの間の高年齢者雇用確保措置の実施は努力義務となります。事業主は、過半数代表者等の同意を得て選択した創業支援等措置を講じることによって定年退職後70歳までの間の就業を確保すれば、それをもって高年齢者雇用確保措置の実施に代えることができます。この改正は2021(令和3)年4月1日施行予定です。
また、「雇用保険法等の一部を改正する法律」には、複数就業者、すなわち副業・兼業を行う労働者に関するセーフティネットの整備として、労災保険法や雇用保険法、労働保険徴収法などの改正が含まれています。これは主に、①複数就業者の労災保険給付について、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や給付の対象範囲の拡充等の見直しや、②複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者について雇用保険を適用することなどを含むもので、①は公布後6月を超えない範囲で政令で定める日に、②は2022(令和4)年1月1日に施行予定です。
このほか、前回のコラムで紹介した消滅時効等に関する労働基準法の改正に関しては、主に記録の保存義務について労働基準法施行規則も改正され(4月1日施行済み)、改正労働基準法・同法施行規則に関して厚生労働省のQ&Aも公表されました。
現在は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向け、テレワークの実施等の新たな労務管理体制の早期構築や、経営状況の変化に伴う対応に追われている方々が多いものと思います。そのような中でも、着実に進んでいる法改正などもありますので、本コラムでは、労務管理に関する偏りなき情報提供を目指して、新型コロナウイルス感染症関係のテーマ以外についても引き続き積極的に取り上げて行く予定です。
※雇用保険法等の一部を改正する法律の概要こちら
※改正労働基準法等に関するQ&A(令和2年4月1日・厚生労働省労働基準局)こちら
※労働基準法施行規則の新旧対照表こちら