「派遣労働者の「同一労働同一賃金」について」

派遣労働者の「同一労働同一賃金」すなわち均等・均衡待遇の確保について、働き方改革関連法による法改正が2020年4月1日より施行されます。なお、中小事業主に対する特例はありません。また、施行日以降に締結された労働者派遣契約だけではなく、施行日をまたぐ契約も改正法の適用を受けます。
派遣労働者の均等・均衡待遇の確保には、2つの方式があります。1つは派遣先均等・均衡方式、もう1つは労使協定方式です。派遣先均等・均衡方式とは、派遣先からの待遇情報の提供を前提に、派遣先の通常の労働者との比較において、待遇の均等・均衡を確保するというものです。労使協定方式は、派遣元において、派遣元の過半数代表者との間で賃金の決定方法等について法所定の要件を満たす労使協定を締結することにより、待遇の均等・均衡を確保するというものです(ただし、教育訓練や、給食施設・休憩室・更衣室といった福利厚生施設については、労使協定方式によることができません)。
派遣労働者の「同一労働同一賃金」は、派遣労働者の就業場所は派遣先であり、待遇に関する派遣労働者の納得感を考慮して、派遣先の労働者との均等・均衡待遇を目指すものです。そのため、派遣法の条文上は、派遣先均等・均衡方式が原則とされ、労使協定が不適法である場合は派遣先均等・均衡方式が当然に適用されます(改正後の30条の3と30条の4を参照)。もっとも、実務上は、派遣先が短期間で変化する場合が多いことや派遣先にかかる負担等を考慮して、労使協定方式による対応が主流となる見込みです。
労使協定方式を採用する場合、派遣元では、2020年3月31日までに、過半数代表者を正しく選出して労使協定を締結する必要があります(なお、事業所単位による締結が可能です)。また、派遣先も、派遣元が労使協定方式を採用するかどうか等をあらかじめ確認する必要があります。
派遣労働者の「同一労働同一賃金」対応については、厚労省作成の「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~改正労働者派遣法への対応~」(2019年3月作成)で詳解されており、ここに労使協定例も掲載されています。また、8月19日には、「労使協定方式に関するQ&A」が厚労省のWebページ「派遣労働者の同一労働同一賃金について」に掲載されました。
(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

(2019年8月26日 更新)

 

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