労働契約法第18条第1項に規定されている無期転換ルールの特例として、特別措置法が成立し、平成27年4月1日(一部公布日)施行となりました。
1) 特別措置法ができた背景
平成25年4月1日施行(一部平成24年8月10日)の改正労働契約法では、無期労働契約への転換ルール(有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えるときは、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換できるルール)が規定されています(法第18条第1項)。
※大学等及び研究開発法人の教員等、研究者、技術者、リサーチアドミニストレーター、及び、民間企業の研究者等で、大学等及び研究開発法人との共同研究に専ら従事する者については、無期労働契約に転換する期間が5年から10年に延長されています(平成26年4月1日施行)
このルールは、有期契約労働者が雇止めを恐れ、年次有給休暇の取得等の労働者としての権利が抑制される懸念からできたものです。
一方、平成25年12月7日に成立した国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)においては、「産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進を図る」観点から、高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期契約労働者等について、無期転換申込権発生までの期間の在り方等について、検討が行われてきました。
2)「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(以後、特別措置法という)の交付
1)の経過を経て、平成26年11月28日、特別措置法が公布され、平成27年4月1日(一部は交付日)から施行されることになりました。なお、この法は、労働契約法の無期転換ルールの特例を規定した措置法であり、労働契約法第18条の無期転換ルールの趣旨を変更するものではありません。概要は次の通り。
この法の施行により、5年を超える有期プロジェクトに従事する専門的知識等を有する一定の有期雇用労働者(第一種特定有期雇用労働者)については上限10年まで、定年後再雇用の有期雇用社員(第二種有期雇用労働者)については引き続き同一の事業主(高年齢者雇用安定法第9条第2項に規定する特殊関係事業主を含む)に雇用されている間は、無期転換申込権が生じないこととなります。
(※特殊関係事業主とは、一定の要件を満たす親会社、子会社、関連会社等のこと)
なお、この特例を適用するためには、予め計画届を提出し、厚生労働大臣の認可を得なければなりません。その前提として厚生労働大臣は基本指針を定めることとなっており、加えて、その他の要件についても、今後、通達が出される予定です。
この法により、専門的知識等を有する有期雇用労働者の活用はもちろんのこと、今後ますます増加する高齢社員の雇用に活用できるようになります。
・参考HP 特別措置法 条文
・【参考】付則第3条(上記概要 4)その他)経過措置について
この経過措置は、「平成27年4月1日において、すでに、労働契約法第18条の無期転換申込権が生じる労働契約を締結している場合には、特別措置法の特例は適用できず、労働契約法の無期転換ルールを適用する」という趣旨です。
ちなみに、有期雇用契約を締結する場合、一契約については次のような制約があります。
従って、たとえば、特例②に該当する労働者が、平成25年4月から1年契約で有期契約を締結し、その後更新し5年の契約を締結した場合、平成27年4月1日には、すでに、無期転換申込権が生じる契約がなされているため、この場合には、特別措置法を適用せず、労働契約法に則り、5年超の無期転換ルール(この場合には、平成26年4月から締結する契約期間中に無期転換申込権が発生)が生じることになります。
YWOO株式会社 特定社会保険労務士 渡辺葉子
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