産業医事務所が、労働安全衛生法に基づく勧告権行使を理由に顧客企業から契約を解除されたと訴えた裁判で、東京高等裁判所(石井浩裁判長)は同事務所の請求を棄却した。勧告権行使を理由とする不利益取扱いを禁止した安衛則の規定は「努力義務」と判示。委嘱契約は準委任に当たり、原則双方がいつでも契約解除できるが、安衛法が労働者の健康確保のために産業医に職務権限を与えていることを考慮し、契約解除が法の趣旨を実質的に失わせている場合は権利濫用に該当するとした。本事案では勧告後、産業医側が労働基準監督署の行政指導を示唆するなど、自ら対決姿勢を深めていったと指摘。信頼関係の破壊を認め、契約解除は有効と判断している。
提供:労働新聞社
(2022年11月1日)