「ホープレス労働」が紹介されました

平成28年9月26日付ダ・ヴィンチニュース (9月26日(月)6時30分配信)において、ホープレス労働が紹介されました。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160926-00012064-davinci-life

 

 この世には仕事も会社もごまんとあるのに、なんで自分はこんな会社に入ってしまったんだろう、どうしてよりによって自分だけこんな仕事をしなければいけないんだろうと、思ってはいないだろうか。

 しかし、日々の出勤を重荷に感じ、仕事への希望を失い、もう明日にでも出社拒否したいと思っている人はあなただけではない。台風が来るたびに休みになってほしいと溢れるネット上の声。日曜日の夕方になると翌日の出勤を思い憂鬱となる“サザエさん症候群”の人たち。社会問題となっている若者の離職率の増加。今、企業ではどのような労働がなされているのか。働く現場では何が起きているのか。将来への漠然とした不安、訳ありの転職、納得のいかない非正規雇用、中流階級からの脱落への不安など、あなたと同じように思い悩んだ仲間たちによる統計では見られない脚色ない生の声から、労働の実態とリアルな労働者たちの暗闇の実状を暴いた1冊の本がある。『ホープレス労働 働く人のホンネ』(増田明利/労働開発研究会)だ。

日本労働組合総連合会が2014年11月に公開した「ブラック企業に関する調査」によると勤務先がブラック企業だと思う人は4人に1人。20代では3人に1人に及ぶ。しかし、そんなメジャーな悩みであるにもかかわらず、勤務先がブラック企業であることで生じた悩みを誰にも相談したことがないと答えた人は4割半。ほぼ2人に1人は自分1人で思い悩んでいるのだ。

ブランド大学に通っていた男性は希望の企業への内定が決まらず低価格を売りにしている某中華料理チェーンに就職した。新卒無業者とならずには済んだものの、仕事が格好悪いと1学年下の彼女にフラれ、友人たちからは「なんで?」と言われ、両親からは堅実な仕事に就いてほしかったと愚痴られたという。そんな気乗りのしない始まりの会社生活は労働基準法を無視した残業が月100時間、休みは月3日、コック見習い兼ホール係兼雑用係。こんな会社にいたら体が壊れてしまうと同期の仲間は2カ月で退社し、1年後には半分が、3年後にはほとんど全員が辞めていったという。飲食業に嫌気がさして別業界の転職活動をしたがなんで別の業界なのかという目で見られ、経験がないため相手にされない厳しい現実が待っていた。

リーマンショックの影響で、進んでいた選考もことごとく撤回され、卒業して5年が経った今でもバイト人生を歩む男性は、卒業後も就職活動を続けていたものの既卒者は中古品扱いで相手にされなかった。既卒3年ルールはそこにない。友人の結婚式などで学生時代の仲間に会うと気後れが生じ、卑屈になるという。

29年間勤務し続けた会社が業務を海外移転することになり、実質上のリストラを受けた50代の男性は、失業後1年でオヤジフリーターになってしまった。店長だけが正社員の生鮮コンビニでは、仕事は多いが昇給なし、賞与なし、交通費なしで使い捨ての扱い。これが非正規に下される低処遇の現実だ。

他にも、雑誌などでやたらと褒め持ち上げられているイクメン社員の育休取得後の実態や、夫の失業により転落人生を歩み始めた主婦の苦難、馬鹿な上司に苦しめられる働き盛りの若者の苦悩などホープレスな現実がこれでもかと紹介されている。

先の「ブラック企業に関する調査」では、今後のブラック企業問題について、20代に関すれば7割近い人が、30代でも6割以上の人が悪化することを予想している。

再雇用制度により実質的に定年退職する年齢が高まっている今、将来に希望も夢もないホープレスな人たちの実態を数多の実例が掲載された本書を通して多くの人に知ってほしい。理不尽な労働環境に耐え悩む人々には、原因が自分ではないことやこの問題が「そんなものか」と満足すべき状態ではないことに気付き、もっと弱音を吐いて周囲に相談してほしい。就職活動で傷つき、入社後に即退職に追い込まれた人たちには、仲間がいることを知り、この経験が自分だけの汚点であると思わずに次への一歩を踏み出す勇気を持ってほしい。そして、こんな仕事をすることがバカバカしいと思い始めているという人には、自分より辛い環境にいる人やもっと過酷な労働に苦しめられている人もいる現実を知り、もうひと踏ん張りする力を得てほしい。本書に記された不満やうっぷんいっぱいのリアルな生の声には、画一的ではないさまざまな労働者の姿とともに、きっとどんな言葉よりも強いメッセージが込められているはずだから。

文=Chika Samon

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