季刊労働法206号(2004/秋季)

特集:成果主意義と能力開発

1990 年代、わが国の企業は不況下における総額人件費低減の要請を契機に、従来の年功序列 制、職能資格制に替わって成果主義を導入し、人事考課、賃金体系の変更を行ってきている。成果主義の導入は、法的にも様々な問題を惹起しており、これまでもその検討はなされて きているが、未だ十分とはいえない。更には近年の労働条件の個別化の流れと並行して成果 主義の導入においても当然に労働契約の個別化が進むことになり、労働契約法の制定の議論 にも無関係ではないと思われる。 さらに、成果主義は、労働者の能力・成果を基礎に人事を行うことを意味するが、そこでは 労働者の能力開発が非常に重要となる。企業の競争力は短期的なアウトプットだけで評価は できず、中長期的な観点からコアコンピタンス(持続的な競争力の源泉)を強化することが 不可欠であるから、個人の能力開発を無視して成果主義を進めることは企業にとって得策と は言えない。能力開発は、たとえば「キャリア権」という概念の提示などにあるように、法的にも検討が 必要な重要問題である。そこで今回は、成果主義と、それに並行して論ずべき能力開発に焦点を当て、法的あるいは 経営論的な視点から論点を浮き彫りにしたいと考える。

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目次

特集:企業組織の再編・変容と労働法

・ 島田 陽一

日本における労働市場・企業組織の変容と労働法の課題

・ 石田 眞

企業組織と労働法―変動の歴史と課題―

・ キャサリン・V・W・ストーン

変わりゆく雇用契約をめぐる法的規制

・ 野田 進

企業組織の再編・変容と労働契約―営業譲渡に伴う採用拒否問題を中心に―

・ 徳住 堅治

企業組織の再編・変容と労働法

・ 中町 誠

合併・営業譲渡と労働関係(使用者側の立場から)

・ 清水 敏

公的サービスのアウトソーシングと公務員の処遇

 

● 第2特集 少子高齢化の中の雇用と年金

・ ウルリッヒ・ヴァルヴァイ

解雇制限の緩和によりより多くの雇用は生まれるのか

・ 西村健一郎

少子高齢社会と高齢被用者の雇用

・ ヴィンフレート・シュメール

ドイツの少子高齢化と年金改革の方向

・ 山崎 泰彦(本来のサキは大ではなく立)

日本の年金改革の方向

 

● 研究論文

・ 川口 美貴、古川 景一

懲戒法理の再構成

・ 本田 量平

労働局紛争調整委員会の現状・課題からのぞましい個別労働関係紛争解決システムを考える

 

● 知的財産法と労働法

・ 永野 秀雄

連載第2回 職務発明(2)

 

● 労働法の立法学

・ 濱口桂一郎

連載第3回 不当労働行為審査制度をさかのぼる

 

● 筑波大学労働判例研究会

・ 田中 達也

外資系コンサルタント会社のマネージャーに対してなされた整理解雇の効力

―PWCフィナンシャル・アドバイザリー・サービス事件―

 

● 書評

・ 長谷川 聡 柴山恵美子・中曽根佐織[編著]

「EUの男女均等政策」

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