季刊労働法207号(2004/冬季)

特集:成果主意義と能力開発

1990 年代、わが国の企業は不況下における総額人件費低減の要請を契機に、従来の年功序列 制、職能資格制に替わって成果主義を導入し、人事考課、賃金体系の変更を行ってきている。成果主義の導入は、法的にも様々な問題を惹起しており、これまでもその検討はなされて きているが、未だ十分とはいえない。更には近年の労働条件の個別化の流れと並行して成果 主義の導入においても当然に労働契約の個別化が進むことになり、労働契約法の制定の議論 にも無関係ではないと思われる。 さらに、成果主義は、労働者の能力・成果を基礎に人事を行うことを意味するが、そこでは 労働者の能力開発が非常に重要となる。企業の競争力は短期的なアウトプットだけで評価は できず、中長期的な観点からコアコンピタンス(持続的な競争力の源泉)を強化することが 不可欠であるから、個人の能力開発を無視して成果主義を進めることは企業にとって得策と は言えない。能力開発は、たとえば「キャリア権」という概念の提示などにあるように、法的にも検討が 必要な重要問題である。そこで今回は、成果主義と、それに並行して論ずべき能力開発に焦点を当て、法的あるいは 経営論的な視点から論点を浮き彫りにしたいと考える。

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目次

特集:成果主意義と能力開発

■鼎談・成果主義は現場でどう機能しているのか

トヨタ自動車労働組合・執行委員長 東 正元

独立行政法人労働政策・研究研修機構・統括研究員 伊藤 実

武田薬品工業株式会社・人事部シニアマネージャー 阪口 克己

■成果主義徹底型賃金制度と労働法

同志社大学法学部・法科大学院教授 土田 道夫

■キャリア権をどう育てていくか?

法政大学大学院政策科学研究科教授 諏訪 康雄

■労働組合からみた成果主義賃金の検証

UIゼンセン同盟副会長 逢見 直人

■労働法の規制緩和論からみた裁量労働制の再検討

日本大学教授 林 和彦

■成果主義の理念と実態

労働政策研究・研修機構統括研究員 伊藤 実

■公務員法における能力・成果主義人事と人材育成

早稲田大学教授 清水 敏

■成果主義人事における能力開発と労働契約

山口大学教授  有田 謙司

■環境変化におけるキャリア形成の課題

富士電機機器制御(株)管理本部企画部課長

前電機連合産業政策部部長・中央執行委員 内田 勝久

 

【特別寄稿】

日本プロ野球界の望ましい労使関係構築に向けて 川井 圭司

 

【研究論文】

権利主張の基盤整備法理ー労働法学のもう一つの視点ー 道幸 哲也

●対談 賃金制度の合理化と法規制

ー労働条件変更規制との関係ー 浜村 彰・野川 忍

 

【研究論文】

人事システム改革と配転・降格の法理 石田 信平

●知的財産法と労働法(連載第3回)職務発明(3) 永野 秀雄

●労働法の立法学(連載第4回) 過半数代表制の課題 濱口 桂一郎

 

【筑波大学労働判例研究会】

N市(大学セクハラ)事件 越川 僚子

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