労働判例ジャーナル117号(2021年・12月)
■注目判例
上司によるパワーハラスメントとうつ病自殺
国・豊田労基署長(トヨタ自動車)事件
■ポイント
本件は,うつ病を発症し,自殺に至った労働者の妻が労災申請をしたところ,豊田労基署長が業務起因性を否定し,この決定の取消しを求めた訴訟でも1審が請求を棄却したため(名古屋地判令2・7・29),これを不服として控訴した事案である。本判決は,1審判決を破棄し,本件自殺の業務起因性を肯定したことで注目される。
業務における過度の精神的負荷に起因する精神的疾病は,「人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度な負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病」(労基則別表第一の二第九)として,労災にあたる列挙疾病とされている。その具体的な判断基準である「精神障害認定基準」によれば,①対象疾病であること,②発病前の概ね6か月前に業務による強い心理的負荷があること,および③業務以外に起因して発病したと認められないこと,の3つの要件を満たす場合に労災と認定される。本件で問題となった②については,心理的負荷を弱・中・強に分類した「心理的負荷評価表」が定められており,総合評価「強」と判断されるとこの要件を満たすと判断される。
このように本判決は,1審と異なり,上司の叱責がパワーハラスメントに該当するものであると評価し,それが本件労働者に強い心理的負荷を与えていたとしたところに特徴があると言えよう。
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目次
◆ 上司によるパワーハラスメントとうつ病自殺
国・豊田労基署長(トヨタ自動車)事件
名古屋高裁(令和3年9月16日)判決
◆ 勤務成績不良等を理由とする解雇無効地位確認等請求
関東経営協同組合事件
東京地裁(令和3年7月30日)判決
◆ 有期雇用契約更新後の賃金の合意
春秋航空日本事件
東京地裁(令和3年7月29日)判決
◆ 有期雇用期間途中の解雇無効地位確認等請求
ローデンストック・ジャパン事件
東京地裁(令和3年7月28日)判決
◆ 善管注意義務違反に基づく損害賠償等請求
損害賠償等請求事件
熊本地裁(令和3年7月21日)判決
◆ 能力不足を理由とする有期雇用期間途中の解雇の有効性
CoinBest事件
東京地裁(令和3年7月19日)判決
◆ 定年後の再雇用における地位確認等請求
阪神高速トール大阪事件
大阪地裁(令和3年7月16日)判決
◆ 休職期間満了による退職通知と地位確認等請求
社会福祉法人天心会事件
大阪地裁(令和3年7月16日)判決
◆ 管理監督者該当性と未払い割増賃金等支払請求
スター・ジャパン事件
東京地裁(令和3年7月14日)判決
◆ 就業後の腕相撲大会における傷害の業務起因性
国・山形労基署長事件
山形地裁(令和3年7月13日)判決
◆ 雇用契約の成立の可否
流通情報センター協同組合事件
東京地裁(令和3年7月7日)判決
◆ 雇止め無効地位確認等請求
スタッフマーケティング事件
東京地裁(令和3年7月6日)判決
◆ 職場秩序紊乱・能力不足等を理由とする解雇の有効性
日本カニゼン事件
東京地裁(令和3年6月25日)判決
◆ タイムカードの代行打刻と降格・懲戒解雇無効等確認請求
ディーエイチシー事件
東京地裁(令和3年6月23日)判決
◆ バス運転手の未払時間外割増賃金等支払請求
東京福祉バス事件
東京地裁(令和3年6月17日)判決
◆ 契約更新期待の合理性
ドコモ・サポート事件
東京地裁(令和3年6月16日)判決
◆ 諭旨退職した元従業員の未払退職金等支払請求
エイブル保証事件
東京地裁(令和3年6月2日)判決
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