労働判例ジャーナル102号(2020年・9月)
■注目判例
嘱託職員と正社員との基本給・賞与の相違と労契法20条
トーカロ事件
■ポイント
本件は,金属等の表面処理加工等を業とする会社(従業員560名)に期間1年の期間の定めのある労働契約により雇用され,21回の更新を経ている女性従業員が,基本給及び賞与が正社員よりも低額であり,地域手当を支給されなかったことが労契法20条に違反するとして会社を訴えた事案である。
労契法20条を巡っては,周知のようにすでに最高裁判決もあり(ハマキョウレックス事件・最判平30・6・1,民集72巻2号88頁,長澤運輸事件・最判平30・6・1),また,多くの下級審裁判例の登場を見ている。ただし,労働条件の相違が争われたのは,各種手当が多く,基本給,賞与という賃金制度の根幹部分については,正面から判断された事案は必ずしも多くなく,また,その判断も統一されていない。このような状況の中で,本件は,基本給,賞与の相違が主たる争点となった事例として注目される。
労契法20条を巡っては,現在最高裁に係属している複数の事案について,この10月にも判断が下されると予想されている。本判決での論点も含め,最高裁がどのような判断を示すかが注目されるところである。
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目次
◆ 嘱託職員と正社員との基本給・賞与の相違と労契法20条
トーカロ事件
東京地裁(令和2年5月20日)判決
◆ 亡職員の精神疾患発症及び自殺の公務起因性
地方公務員災害補償基金岩手県支部長事件
盛岡地裁(令和2年6月5日)判決
◆ テストライダーの労働者性
国・津山労基署長事件
大阪地裁(令和2年5月29日)判決
◆ 就業時間前後の労働時間該当性
淀川勤労者厚生協会事件
大阪地裁(令和2年5月29日)判決
◆ 法人格否認の法理と未払割増賃金等支払請求
タカラ運送ほか1社事件
大阪地裁(令和2年5月28日)判決
◆ 窃盗を理由とする懲戒解雇の有効性
近畿中央ヤクルト販売事件
大阪地裁(令和2年5月28日)判決
◆ 地域おこし協力隊員の労働者性
国・十日市事件
新潟地裁(令和2年5月27日)判決
◆ パワハラ・安全配慮義務違反に基づく損害賠償等請求
栃木県交通安全協会事件
宇都宮地裁(令和2年5月20日)判決
◆ 秘密漏洩等を理由とする懲戒解雇の有効性
追手門学院事件
大阪地裁(令和2年3月25日)判決
◆ 英会話講師の解雇無効地位確認等請求
ベルリッツ・ジャパン事件
東京地裁(令和2年3月3日)判決
◆ 身体的接触及びくじ引き行為に基づく慰謝料等請求
海外需要開拓支援機構ほか1社事件
東京地裁(令和2年3月3日)判決
◆ 営業成績給を廃止する就業規則の変更の有効性
野村不動産アーバンネット事件
東京地裁(令和2年2月26日)判決
◆ 暴行を理由とする懲戒諭旨解雇無効に基づく損害賠償等請求
日本ハウズイング事件
東京地裁(令和2年2月27日)判決
◆ カッター振回し行為を理由とする懲戒解雇等の有効性
日本電産トーソク事件
東京地裁(令和2年2月19日)判決
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