労働判例ジャーナル94号(2020年・1月)

■注目判例

育児のために正社員から契約社員に移行した女性従業員の正社員への復帰の可否

ジャパンビジネスラボ事件

■ポイント

 本件の女性従業員は、保育園が決まらないことから、育児休業終了後、正社員から契約社員に移ることを会社と合意した(以下、「本件合意」とする。)。女性従業員は、会社に子を入れる保育園が見つかったとして,正社員に復帰するよう求めた。女性従業員のこのような申入れを行ったのは、先の契約社員に移る合意について、正社員に復帰できることが前提であり、正社員としての契約が終了したと認識していなかったからである。しかし、会社は、正社員としての契約が終了していることを前提に、この申出を拒否した。そして、その後女性従業員の契約社員としての有期労働契約を雇止めした。そこで、女性従業員が、正社員としての地位などを求めて会社を訴えたのである。
 原審(東京地判平30・9・11本誌80号2頁)は,復帰後の合意によって正社員契約は解約されたものの,契約社員としての有期労働契約の雇止めは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないとした。また、この契約の準備段階における信義則上の義務違反があるとして,慰謝料100万円などの支払いを命じた。さらに、会社からの記者会見における発言に対する名誉毀損の訴えを棄却した。

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目次

◆ 育児のために正社員から契約社員に移行した女性従業員の正社員への復帰の可否

ジャパンビジネスラボ事件

東京高裁(令和元年11月28日)判決

◆ 商品持ち帰りを理由とする懲戒解雇の有効性

ロピア事件

横浜地裁(令和元年10月10日)判決

◆ 僧侶らの解雇無効地位確認等請求

大岡寺・圓満院事件

大津地裁(令和元年10月3日)判決

◆ 元防衛大学生の国に対する損害賠償等請求

国・法務大臣(防衛大学校)事件

福岡地裁(令和元年10月3日)判決

◆ 介護職員らの加算金等による処遇改善相当額支払等請求

しんわ・ほか2社事件

横浜地裁横須賀支部(令和元年9月30日)判決

◆ 准教授のセクハラ行為と懲戒解雇の有効性

愛知県公立大学法人事件

名古屋地裁(令和元年9月30日)判決

◆ 障害等級14級とした障害給付支給処分の取消請求

国・堺労基署長事件

大阪地裁(令和元年9月30日)判決

◆ 能力を著しく欠くことを理由とする解雇の有効性

豊田中央研究所事件

名古屋地裁(令和元年9月27日)判決

◆ 双極性障害の業務起因性と症状固定の成否

国・高崎労基署長事件

前橋地裁(令和元年9月26日)判決

◆ 長時間労働による疾病未発生での慰謝料請求

狩野ジャパン事件

長崎地裁大村支部(令和元年9月26日)判決

◆ バス運転手待機時間の労基法上の労働時間該当性

北九州市(市営バス)事件

福岡地裁(令和元年9月20日)判決

◆ 変形労働時間制の成否と賞与の残業代該当性

GWG事件

大阪地裁(令和元年9月17日)判決

◆ 適応障害発症に基づく損害賠償等請求

大和ハウスフィナンシャル事件

大阪地裁(令和元年9月12日)判決

◆ 介護職員らの社会福祉法人に対する未払賃金等支払請求

社会福祉法人千草会事件

福岡地裁(令和元年9月10日)判決

◆働きやすい環境等請求

日本生命保険事件

大阪地裁(令和元年9月5日)判決

◆未払賃金等支払請求及び解雇予告手当等支払請求

万和事件

大阪地裁(令和元年9月5日)判決

◆タクシー乗務員に対する物損事故についての分担金等支払請求

トモエタクシー事件

大阪地裁(令和元年9月2日)判決

◆ 病院勤務医師の町に対する減額手当相当分支払請求

士幌町事件

札幌高裁(令和元年8月27日)判決

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