労働判例ジャーナル86号(2019年・5月)
■注目判例
アルバイト職員と正職員との労働条件の相違の不合理性
大阪医科薬科大学事件
大阪高裁(平成31年2月15日)判決
■ポイント
本件は,大学に約3年2カ月勤務し,退職したアルバイト職員が正職員との労働条件の相違(基本給,賞与,年休日数,夏期特別休暇,私傷病休業の際の補償など)を労契法20条違反であるとして損害賠償を請求した事案である。労契法20条を巡る裁判例は,昨年6月1日の二つの最判(ハマキョウレックス事件および長澤運輸事件)以降も多くの裁判例が登場し,また,多様な論点が提示されている(例えば,北日本放送事件・富山地判平30・12・9本誌84号,メトロコマース事件・東京高判平31・2・20本誌85号など)。
このなかで本件は,正職員との職務内容及び異動の可能性が大きく異なるだけではなく,これまでの多くの事例と異なり,比較的な勤務期間の短い有期雇用労働者の事例であったことに特徴がある。本件の原審(大阪地判平30・1・24本誌74号)は,職務内容とその実際の就労実態及異動の範囲の相違などを考慮して,アルバイト職員の請求を全て棄却していた。ところが,本判決は,職務内容及び異動の可能性に関する大きな相違を前提しながら,賞与,夏期特別休暇及び私傷病休業の際の補償の相違を不合理とし,アルバイト職員の請求を一部認容した。
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目次
◆ アルバイト職員と正職員との労働条件の相違の不合理性
大阪医科薬科大学事件
大阪高裁(平成31年2月15日)判決
◆ 精神疾患発症後の自死における業務起因性
国・中央労基署長事件
福岡高裁(平成31年2月21日)判決
◆ 賃金合意無効等に基づく未払賃金等支払請求
エムスリーキャリア事件
大阪地裁(平成31年1月31日)判決
◆ 個人情報持ち出し行為等と停職処分取消請求
鳴門市・鳴門市教育委員会事件
徳島地裁(平成31年1月30日)判決
◆ 有期労働契約を理由とする不合理な労働条件の相違
日本郵便事件
大阪高裁(平成31年1月24日)判決
◆ 歯科医師の非行に対する院長の管理監督責任
富士吉田市事件
甲府地裁(平成31年1月22日)判決
◆ 定年後再雇用後の雇止め無効地位確認等請求
社会福祉法人高槻ライフケア協会事件
大阪地裁(平成31年1月22日)判決
◆ 役員及び従業員の不法行為に基づく損害賠償等請求
YRK and事件
大阪地裁(平成31年1月17日)判決
◆ 懲戒処分(けん責処分)の無効確認等請求
WOWOW事件
東京地裁(平成30年12月26日)判決
◆ わいせつ行為等に基づく農協に対する損害賠償等請求
佐賀県農業協同組合事件
佐賀地裁(平成30年12月25日)判決
◆ チャット上での書き込みに基づく損害賠償等請求
港製器工業事件
大阪地裁(平成30年12月20日)判決
◆ うつ病発症による休職満了後の退職扱い無効地位確認等請求
コメット歯科事件
名古屋高裁(平成30年12月17日)判決
◆ 業務と自殺との間の相当因果関係の成否
ディーソルNSP・ディーソル事件
福岡地裁(平成30年12月11日)判決
◆ 能率低下等を理由とする解雇無効地位確認等請求
ネクスト・イット事件
東京地裁(平成30年12月5日)判決
◆ 脳梗塞発症に基づく会社に対する損害賠償等請求
フルカワ事件
福岡地裁(平成30年11月30日)判決
◆ 勤務成績の決定行為に対する不当労働行為申立棄却取消請求
国・中労委(明治)事件
東京地裁(平成30年11月29日)判決
◆ 年休の継続勤務要件の成立の可否
学校法人文際学園事件
東京地裁(平成30年11月2日)判決
◆ 事務局次長としての雇用契約上の地位確認等請求
第二東京弁護士会事件
東京地裁(平成30年10月11日)判決
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