労働判例ジャーナル80号(2018年・11月)
■注目判例
育児のために正社員から契約社員に移行した女性従業員の正社員への復帰の可否
ジャパンビジネスラボ事件
東京地裁(平成30年9月11日)判決
■ポイント
女性従業員が就労を継続しながら出産・育児ができる環境を整備することは,少子高齢化社会において女性がその能力を発揮するうえで現代の重要な社会的課題となっている。そして,女性従業員の妊娠・出産を契機とする降格は,原則として男女雇用機会均等法9条3項に違反するとする最高裁判例(広島中央保健生協事件・最1小判平26・10・23本誌33号)があるが,出産・育児に関連する労使紛争が相次いでいるようにまだまだ多様な障害がある状況にある。
本件は,この状況を示すものと言える。本件の女性従業員は,保育園が決まらないことから,育児休業終了後,正社員から契約社員に移ることを会社と合意した(以下,「本件合意」とする。)。女性従業員は,会社に子を入れる保育園が見つかったとして,正社員に復帰するよう求めた。女性従業員がこのような申入れを行ったのは,先の契約社員に移る合意について,正社員に復帰できることが前提であり,正社員としての契約が終了したと認識していなかったからである。しかし,会社は,正社員としての契約が終了していることを前提に,この申出を拒否した。そして,その後女性従業員の契約社員としての有期労働契約を雇止めした。そこで,女性従業員が,正社員としての地位などを求めて会社を訴えたのが本件である。
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目次
◆ 育児のために正社員から契約社員に移行した女性従業員の正社員への復帰の可否
ジャパンビジネスラボ事件
東京地裁(平成30年9月11日)判決
◆ 教団の教師の休養命令無効地位確認等請求
パーフェクトリバティー教団事件
大阪地裁(平成30年7月25日)判決
◆ 市職員の飲酒運転を理由とする懲戒処分無効確認等請求
茨城県市町村総合事務組合事件
水戸地裁(平成30年7月20日)判決
◆ 降格処分の有効性
学校法人大阪産業大学事件
大阪地裁(平成30年7月18日)判決
◆ 自殺した労働者の相続人によるパワハラに基づく損害賠償等請求
ゆうちょ銀行事件
徳島地裁(平成30年7月9日)判決
◆ 新聞記者への情報提供を理由とする出勤停止処分無効確認等請求
帝産湖南交通事件
大阪高裁(平成30年7月2日)判決
◆ ビラ配布等に対する不当労働行為救済命令取消請求
国・中労委(国立大学法人福岡教育大学)事件
東京高裁(平成30年6月28日)判決
◆ 労働基準法上の労働者該当性
国・瀬峰労基署長事件
東京地裁(平成30年5月31日)判決
◆ 固定残業代の有効性と減額賃金への合意の成否
ビーダッシュ事件
東京地裁(平成30年5月30日)判決
◆ 介護施設における看護師のうつ病発症の業務起因性
国・平塚労基署長事件
東京地裁(平成30年5月30日)判決
◆ 路線バス運転手らの時間外割増賃金等支払請求
阪急田園バス事件
大阪地裁(平成30年5月30日)判決
◆ 変形労働時間制の可否
阪急バス事件
大阪地裁(平成30年5月30日)判決
◆ パワーハラスメントに基づく慰謝料等請求
フクダ電子長野販売事件
最高裁第三小法廷(平成30年5月15日)決定
◆ 離婚した妻の夫(会社代表者)及び会社に対する慰謝料・未払賃金等請求
離婚慰謝料等支払請求事件
東京地裁(平成30年5月11日)判決
◆ 未払割増賃金及び付加金等支払請求
PMKメディカルラボ・PMK事件
東京地裁(平成30年4月18日)判決
◆無期雇用契約の成否と地位確認等請求
学校法人河合塾事件
東京地裁(平成30年3月28日)判決
◆ 元秘書の弁護士に対する慰謝料及び未払賞与・退職金等支払請求
損害賠償等請求事件
東京地裁(平成30年3月26日)判決
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