労働判例ジャーナル72号(2018年・3月)

■注目判例

女性従業員のうつ病自殺と会社の責任

加野青果事件
名古屋高裁(平成29年11月30日)判決

■ポイント

 本件は先輩従業員による女性従業員に対する注意・叱責行為に端を発するハラスメント事案である。先輩従業員が後輩従業員に対し,業務上の指導として,注意・叱責を行うことは当然であり,必要なことであるが,それが度を超すと違法な行為となる。本判決は,先輩従業員による注意・叱責が継続的かつ頻回であって女性従業員に対し,一方的に威圧感や恐怖心を与えるものであったといえるから,社会通念上許容される業務上の指導の範囲を超えて,女性従業員に精神的苦痛を与える不法行為に該当すると判断した。
 本件において重要なことは,女性従業員がこのようなハラスメントなどを受けるなかでうつ病に罹患し,自殺に至ったことの責任の帰属である。

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目次

◆ 女性従業員のうつ病自殺と会社の責任

加野青果事件

名古屋高裁(平成29年11月30日)判決

◆ パワハラに基づく元上司と会社に対する損害賠償等請求

東建コーポレーション事件

名古屋地裁(平成29年12月5日)判決

◆  精神障害発症後の自殺の業務起因性

国・堺労基署長(精神障害後の自殺)事件

大阪地裁(平成29年11月29日)判決

◆ 飲酒運転時の人身事故を理由とする懲戒免職処分取消請求

米沢市事件

仙台高裁(平成29年11月29日)判決

◆ 虚偽報告等に基づく懲戒解雇の有効性

アストラゼネカ事件

東京地裁(平成29年10月27日)判決

◆ 酒気帯び運転中の事故に基づく未払退職金等支払請求

日本通運事件

東京地裁(平成29年10月23日)判決

◆ 顧客に対する不正な説明等による懲戒処分の有効性

プルデンシャル生命保険事件

東京地裁(平成29年10月13日)判決

◆ 降格前の地位確認及び解雇無効地位確認請求

ドラツグマガジン事件

東京地裁(平成29年10月11日)判決

◆ 不利益な定年後再雇用の労働条件提示等に係る不当労働行為該当性

大阪府・府労委(ナンセイ)事件

大阪地裁(平成29年10月11日)判決

◆出向先に勤務する雇用契約上の義務不存在確認請求

東日本旅客鉄道事件

東京地裁(平成29年10月10日)判決

◆ 心因性精神障害発病に基づく療養補償給付等不支給処分取消請求

国・品川労基署長(心因性精神障害発病)事件

東京地裁(平成29年7月7日)判決

◆ 産婦人科医師の手待時間の労基法上の労働時間該当性

医療法人社団恵育会事件

東京地裁(平成29年6月30日)判決

◆  任用期間経過後の地位確認等請求

八王子市事件

東京地裁(平成29年6月19日)判決

◆ 雇用契約に基づく未払賃金等支払請求

クリエイト・ジャパン事件

東京地裁(平成29年5月29日)判決

◆ 合同(合併)後の労働条件不利益変更の有効性

ジブラルタ生命労働組合事件

東京地裁(平成29年3月28日)判決

◆休職期間満了時の職務に耐えられないことを理由とする解雇の有効性

エミレーツ航空会社事件

東京地裁(平成29年3月28日)判決

◆ 横領を理由とする降格処分の可否

東京三協信用金庫事件

東京地裁(平成29年3月17日)判決

◆各手当の「月によって定められた賃金」該当性

川崎陸送事件

東京地裁(平成29年3月3日)判決

◆ 賃金減額を伴う配転命令及び懲戒解雇の有効性

レコフ事件

東京地裁(平成29年2月23日)判決

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