労働判例ジャーナル61号(2017年・4月)
■注目判例
タクシー運転手の歩合給における割増賃金制度の適法性
国際自動車事件
最高裁第三小法廷(平成29年2月28日)判決
■ポイント
本件は,タクシー会社に勤務する乗務員が賃金規則に基づく賃金の算定方法が違法であるために生じている未払い賃金を請求したものである。
歩合給の場合の割増賃金の算定については,これまでも,通常の労働時間に対する賃金と時間外・深夜の労働時間に対する割増賃金とが判別できない場合には,割増賃金を支払ったことにならないとされた例(高知県観光事件・最二小判平6・6・13)や同じように一定範囲の労働時間について,割増賃金を含むとする支払い方法を認めない例(テックジャパン事件・最一小判平24・3・8)が示されてきた。
これに対して本件は,通常の労働時間に対する賃金と割増賃金とを区別することは可能であった。ただし,歩合給の算定にあたって,割増賃金分が控除されるということが許容されるかというこれまでにない論点が問題となった事案である。
法定時間外労働に対する割増賃金が実際上支払われていないと同様となる歩合給の計算方法が割増賃金制度の趣旨に適合しないことは間違いない。しかし,最判は,従来の判断枠組みを採用してその違法性を明らかにすることを明確にした。差戻審の判断が注目されるとところである。
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目次
◆ タクシー運転手の歩合給における割増賃金制度の適法性
国際自動車事件
最高裁第三小法廷(平成29年2月28日)判決
◆ 累積無事故表彰制度に基づく副賞等支払請求
川崎陸送事件
東京地裁(平成28年12月26日)判決
◆ 契約更新への期待と貸与物の私的利用による雇止めの有効性
大阪ガス・カスタマーリレーションズ事件
大阪地裁(平成28年12月22日)判決
◆ うつ病自殺に対する公務外災害認定処分取消請求
地方公務員災害補償基金岐阜県支部長(うつ病自殺)事件
岐阜地裁(平成28年12月22日)判決
◆雇止め無効地位確認と社宅不法占拠に基づく損害賠償請求
エリクソン・ジャパン事件
東京地裁(平成28年12月22日)判決
◆ 酒気帯び運転等を理由とする退職手当支給制限処分取消請求
岩手県市町村総合事務組合事件
仙台高裁(平成28年12月20日)判決
◆ コンビニ元従業員のパワハラに基づく損害賠償等請求
コンビニエース事件
東京地裁(平成28年12月20日)判決
◆ 元職員の市に対する昇任義務付け等請求
大阪狭山市事件
大阪地裁(平成28年12月19日)判決
◆ 競業避止合意に基づく競業行為差止等請求
デジタルパワーステーション事件
東京地裁(平成28年12月19日)判決
◆ セクハラ行為に基づく懲戒解雇無効地位確認等請求
ほけんの窓口グループ事件
大阪地裁(平成28年12月15日)判決
◆ 退職する労働者への損害賠償請求の有効性
美庵事件
大阪地裁(平成28年12月13日)判決
◆ 定年後の教員の再任不合格に対する損害賠償等請求
豊中市事件
大阪地裁(平成28年12月12日)判決
◆ 改ざん行為を理由とする未払退職金支払等請求
医療法人貴医会事件
大阪地裁(平成28年12月9日)判決
◆ 教官の服務規程違反等に基づく解雇無効地位確認等請求
長坂自動車教習所事件
甲府地裁(平成28年12月6日)判決
◆ やらせ受験を理由とする懲戒処分の有効性
学校法人大阪産業大学事件
大阪地裁(平成28年12月2日)判決
◆ 教員による学生及び学校法人に対する損害賠償等請求
学校法人C事件
千葉地裁松戸支部(平成28年11月29日)判決
◆ 宅配スタッフの労働契約等に基づく未払賃金等支払請求
フロンティア事件
大阪地裁(平成28年11月24日)判決
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