労働判例ジャーナル54号(2016年・9月)

■注目判例

正社員運転手と契約社員運転手との労働条件の相違の不合理性

ハマキョウレックス事件
大阪高裁(平成28年7月26日)判決

■ポイント

 この事件は,正社員と契約社員との労働条件の相違が労契法20条のいう「不合理なもの」と言えるかが争われた事案における最初の高裁判決である(原判決については,本誌48号の注目判例のポイントを参照)。正社員と有期労働契約労働者の労働条件の相違が不合理なものであるとして労契法20条違反となるかの判断について,具体的な判断枠組みを示し,労働条件ごとに詳細な判断をしており,今後に影響力を有する注目すべき判決と言える。
 本件会社の正社員と契約社員のドライバーとしての仕事の内容は,大きな相違がないが,正社員が将来,支店長や事業所の管理責任者等の会社の中核を担う人材として登用される可能性がある者としてとり扱われており,両者の間には,人材活用の仕組みにおいて相違があった。原判決(大津地裁彦根支判平27・9・16,本誌48号6頁)は,このことから通勤手当を除いて,本件の正社員と契約社員との労働契約条件の相違は,会社の経営・人事制度上の施策として不合理なものとはいえないとして,本件運転手の有期労働契約に基づく労働条件の定めが公序良俗に反せず,また,労契法20条には違反しないとした。
 これに対して,本判決は,正社員と契約社員との人材活用の差から直ちに諸手当の相違を不合理なものと判断するのではなく,個々の労働条件ごとに判断するという枠組みを提示した。

年間購読料:29,700円(27,000円+税)※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です

目次

【注目判例】

◆ 正社員運転手と契約社員運転手との労働条件の相違の不合理性

ハマキョウレックス事件

大阪高裁(平成28年7月26日)判決

◆ 退職の意思表示の瑕疵に基づく地位確認等請求

朝日生命保険相互事件

東京地裁(平成28年6月21日)判決

◆ 英語講師の厚生年金保険被保険者資格取得確認等請求

日本年金機構(ベルリッツ・ジャパン)事件

東京地裁(平成28年6月17日)判決

◆ 人格権侵害等に基づく会社代表者に対する損害賠償請求

カンリ事件

最高裁第一小法廷(平成28年6月16日)決定

◆ 不正競争防止法に基づく差止め等請求

中部薬品(さくら医薬品・さくら薬品)事件

富山地裁(平成28年6月15日)判決

◆ 元教員の女子生徒との性的関係に基づく懲戒免職処分等取消請求

福島県・福島県教育委員会事件

福島地裁(平成28年6月7日)判決

◆ 退職した元従業員の会社等に対する貸金返還等請求

夢現舎事件

東京地裁(平成28年6月3日)判決

◆ 外資系金融会社の元従業員による解雇無効地位確認等請求

ドイツ証券事件

東京地裁(平成28年6月1日)判決

◆ 雇止め無効地位確認等請求

一般財団法人滑川市文化・スポーツ振興財団事件

富山地裁(平成28年6月1日)判決

◆ 降格前の地位にあることの確認等請求

ファイザー事件

東京地裁(平成28年5月31日)判決

◆ 調理師の時間外割増賃金等請求

無洲事件

東京地裁(平成28年5月30日)判決

◆ うつ病自殺に基づく遺族補償給付等不支給処分取消請求

国・大阪西労基署長(うつ病自殺)事件

大阪地裁(平成28年5月30日)判決

◆ 時間外割増賃金等支払請求と損害賠償請求

ハンワ事件

大阪地裁(平成28年5月27日)判決

◆ 厚年法に基づく届出義務を怠ったことによる損害賠償等請求

中央技建工業事件

大阪地裁(平成28年5月26日)判決

◆ うつ病自殺に基づく損害賠償請求

Y会社事件

東京地裁(平成28年5月19日)判決

◆ 雇用契約外の業務履行に基づく未払賃金等支払請求

セコム事件

東京地裁(平成28年5月19日)判決

◆ 障害による能力不足に基づく解雇無効地位確認等請求

三益興業事件

東京地裁(平成28年5月18日)判決

◆ 非違行為に基づく解雇無効地位確認等請求

新生フィナンシャル事件

大阪地裁(平成28年5月17日)判決

◆ 70歳までの再雇用を拒否された大学教員の地位確認等請求

学校法人尚美学園事件

東京地裁(平成28年5月10日)判決

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