労働判例ジャーナル52号(2016年・7月)
■注目判例
継続雇用制度による嘱託社員と正社員との不合理な労働条件格差
長澤運輸事件
東京地裁(平成28年5月13日)判決
■ポイント
労働契約法20条をめぐっては,すでに裁判例が登場しており,本誌でも紹介したところである(ハマキョウレックス事件・大津地判平27・9・16本誌48号,2016年3月)。
この事件は,運転手である正社員と契約社員の労働条件の相違が問題となったが,正社員と契約社員の人材活用の範囲が異なることから,通勤手当以外の労働条件の相違が不合理なものではないとされた。本件は,業務の内容は運転手という共通性があるが,定年退職後の継続雇用制度によって勤務を継続している嘱託職員と正社員との労働条件の相違が問題となったという特色がある。
本件で会社は,継続雇用制度の嘱託社員と正社員との労働条件の相違に労働契約法20条が適用されないことを主張したが,本判決は,継続雇用制度の嘱託社員の労働条件を正社員より低く設定することに経営上の合理性があることを認めながらも,この両者の賃金の相違も期間の定めの有無によるものであり,同条が適用になるとした
本判決によれば,継続雇用制度での嘱託社員について,定年前の正社員時代と同様の職務内容を漫然と継続することが労働契約法20条によって大きく制約されることになったといえる。
年間購読料:29,700円(27,000円+税)※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です |
目次
【注目判例】
◆ 継続雇用制度による嘱託社員と正社員との不合理な労働条件格差
長澤運輸事件
東京地裁(平成28年5月13日)判決
◆ 定年後の雇止め無効地位確認等請求
千曲食品事件
東京地裁(平成28年4月27日)判決
◆ 職能給の取扱と未払時間外割増賃金等請求
カンティーヌ・ドール事件
東京地裁(平成28年4月27日)判決
◆ 労基法4条違反に基づく差額賃金分等支払請求
東和工業事件
名古屋高裁金沢支部(平成28年4月27日)判決
◆ マタハラ等に基づく損害賠償等請求
ツクイ事件
福岡地裁小倉支部(平成28年4月19日)判決
◆ 雇止め無効地位確認等請求
三洋電機事件
広島高裁松江支部(平成28年4月13日)判決
◆ 米軍基地内元職員の解雇無効地位確認等請求
国・法務大臣事件
横浜地裁横須賀支部(平成28年4月11日)判決
◆ 同業他社転職に基づく退職加算金返還等請求
野村證券事件
東京地裁(平成28年3月31日)判決
◆ 不正アクセスに基づく懲戒解雇無効損害賠償等請求
武生信用金庫訴訟承継人福井信用金庫事件
福井地裁(平成28年3月30日)判決
◆ セクハラ・パワハラに基づく損害賠償等請求
ワールドインテリジェンスパートナーズジャパン事件
東京地裁(平成28年3月30日)判決
◆ 自宅外での飲酒禁止に対する慰謝料請求
福岡市事件
福岡地裁(平成28年3月29日)判決
◆ 長崎県に対する元臨時職員の退職手当等支払請求
長崎県事件
長崎地裁(平成28年3月29日)判決
◆ 偽造書類作成等に基づく解雇無効未払賃金等支払請求
OBネットワーク事件
東京地裁(平成28年3月29日)判決
◆ 業績不良に基づく解雇無効地位確認等請求
日本アイ・ビー・エム事件
東京地裁(平成28年3月28日)判決
◆ 郵便局長のパワハラに基づく損害賠償等請求
日本郵便事件
福岡地裁小倉支部(平成28年3月10日)判決
◆ 1か月連続24時間勤務と416時間残業に基づく割増賃金請求
ジヤコス事件
東京地裁(平成28年3月4日)判決
◆ 組合に対する損害賠償等請求及び記事削除等請求
東京ふじせ企画労働組合(学研HDほか)事件
東京地裁(平成28年2月15日)判決
◆ 全員取締役とされた塾講師の賃金減額の有効性
類設計室事件
大阪地裁(平成28年1月29日)判決
年間購読料:29,700円(27,000円+税)※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です |