労働判例ジャーナル49号(2016年・4月)

■注目判例

女性アイドルの交際禁止条項の有効性

S社ほか事件
東京地裁(平成27年9月18日)判決

■ポイント

 この事件は,女性アイドルが交際禁止条項に違反したことを理由として損害賠償請求を受けたものである。女性アイドルについては,このような交際禁止が一般的であるという状況の中で,本判決が,この損害賠償を一部とはいえ,認容したことから社会的にも注目を集めている。
 本判決においては,交際禁止条項について芸能事務所らが十分な指導をしていなかったことが過失相殺の判断において考慮されてはいる。しかし,本件の契約においては,このビジネスモデルに当然随伴するものとして交際禁止条項を定めているが,本件における女性アイドルにその条項の内容およびその違反の範囲について,丁寧に説明しているとは言えないし,その姿勢がその後の指導における不十分さに現れているのであるから,交際禁止条項の有効性を認めるとしても,その効果について限定的に解釈し,本件女性アイドルの損害賠償責任を認めないという判断もあり得たように思われる。
 いずれにしても,今後,議論となる課題と思われる。

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目次

◆ 女性アイドルの交際禁止条項の有効性

S社ほか事件

東京地裁(平成27年9月18日)判決

 

◆ 業務命令違反等に基づく解雇無効等請求

ポッカサッポロフード&ビバレッジ事件

東京地裁(平成28年1月29日)判決

 

◆ 請求時在籍要件無効に基づく歩合給支払請求

大東建託事件

東京地裁(平成28年1月29日)判決

 

◆ 原職場での復職を命じた復職命令の有効性

三菱重工業事件

東京地裁(平成28年1月26日)判決

 

◆ 宗教法人の権禰宜による地位確認等請求

宗教法人本牧神社事件

東京地裁(平成28年1月25日)判決

 

◆ 観光バス運転手の脳出血の業務起因性

国・長野労基署長(脳出血死)事件

長野地裁(平成28年1月22日)判決

 

◆ 競業避止義務違反に基づく損害賠償等請求

第一紙業事件

東京地裁(平成28年1月15日)判決

 

◆ 降格処分前の地位にあること等の確認等請求

大王製紙事件

東京地裁(平成28年1月14日)判決

 

◆ 変形労働時間制の適用と時間外割増賃金支払等請求

東洋テック事件

東京地裁(平成28年1月13日)判決

 

◆ 年休を付与しなかったことに基づく損害賠償等請求

中津市事件

大分地裁中津支部(平成28年1月12日)判決

 

◆ 管理監督者性と未払割増賃金等支払請求

INSOU西日本事件

大阪地裁(平成27年12月25日)判決

 

◆ 各種割増手当の割増賃金性

富士運輸事件

東京高裁(平成27年12月24日)判決

 

◆ 元支店長の信託銀行に対する損害賠償請求

三井住友信託銀行事件

大阪地裁(平成27年12月24日)判決

 

◆ 時間外労働限度時間を越える固定残業代の適法性

フジデン事件

大阪地裁(平成27年12月22日)判決

 

◆ 元看護助手による損害賠償請求

医療法人北辰会事件

大阪地裁(平成27年12月22日)判決

 

◆ 歓迎会でのセクハラ行為と会社等への損害賠償請求

福岡トヨペツト事件

福岡地裁(平成27年12月22日)判決

 

◆ うつ病自殺の業務起因性

国・東大阪労基署長事件

大阪地裁(平成27年12月21日)判決

 

◆ 会社の元従業員に対する損害賠償等請求

ネットドリーム事件

大阪地裁(平成27年12月10日)判決

 

◆ 降格命令および配転命令無効確認等請求

医療法人精華園事件

高松高裁(平成27年11月6日)判決

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