労働判例ジャーナル47号(2016年・2月)
■注目判例
精神疾患に起因する自殺と出向元・出向先の安全配慮義務
四国化工機・植田酪農機工業事件
高松高裁(平成27年10月30日)判決
■ポイント
本件は,出向先において精神疾患を発症した設計技師が,出向元に復帰後自殺したことについて,その遺族が出向元及び出向先に安全配慮義務があったとして,双方に損害賠償請求を求めた事案である。設計技師の自殺については,遺族による労災補償支給を求める別件訴訟において,業務起因性が認められ,確定している(国・江戸川労基署長(四国化工機工業)事件・高松高判平21・12・25)。このため,本件では業務起因性というよりも,それを前提として出向元及び出向先の安全配慮義務違反が中心的な争点となった。
本判決は,1審判決と同様に出向元の安全配慮義務違反を否定するとともに,出向先の安全配慮義務も否定したところに特徴がある。出向元の出向命令に関わる安全配慮義務についての判断についても参考にすべき判断を示しているが,出向先の安全配慮義務違反に関する判断が重要と言える。
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目次
◆ 精神疾患に起因する自殺と出向元・出向先の安全配慮義務
四国化工機・植田酪農機工業事件
高松高裁(平成27年10月30日)判決
◆ 女子生徒へのメールを理由とする懲戒免職処分
東京都教育委員会事件
東京地裁(平成27年10月26日)判決
◆ 本名である韓国名の使用勧奨とプライバシー権
カンリ事件
東京高裁(平成27年10月14日)判決
◆ 大阪市教職員組合の大阪市に対する損害賠償等請求
大阪市(大阪市教職員組合)事件
大阪高裁(平成27年10月13日)判決
◆ 試用期間中の解雇無効地位確認等請求
医療法人財団天翁会事件
東京地裁(平成27年9月30日)判決
◆ 脳動脈瘤の業務起因性
国・庄内労基署長事件
山形地裁(平成27年9月29日)判決
◆ 育児期間中の保育所利用請求に関する執行停止処分
所沢市(保育所利用継続不可決定取消請求)事件
さいたま地裁(平成27年9月29日)決定
◆ 財務本部長の不正請求に基づく解雇無効等請求
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン事件
東京地裁(平成27年9月25日)判決
◆ 大学教員らのパワハラと懲戒処分無効等確認
学校法人東京理科大学事件
東京地裁(平成27年9月25日)判決
◆ 短大廃止に伴う専任教員の整理解雇
学校法人専修大学事件
札幌地裁(平成27年9月18日)判決
◆ 論文の盗用・改ざんを理由とする降格処分
学校法人久留米大学事件
福岡地裁久留米支部(平成27年9月18日)判決
◆ 国の不当労働行為と使用者性
中労委(不当労働行為)事件
東京地裁(平成27年9月10日)判決
◆ インストラクターの安全配慮義務と損害賠償請求
ダイビングショップE事件
那覇地裁(平成27年9月9日)判決
◆ 元自衛官の人格権侵害等に基づく慰謝料請求
国・陸上自衛隊事件
釧路地裁(平成27年9月10日)判決
◆ 解雇通知書の効力と地位確認等請求
旭オリエント事件
東京地裁(平成27年9月10日)判決
◆ 石綿ばく露に基づく損害賠償請求
中央電設事件
最高裁第三小法廷(平成27年9月8日)決定
◆ 心室細動による死亡の業務起因性
国・東近江労基署長事件
大津地裁(平成27年8月27日)判決
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