労働判例ジャーナル04号(2012年・07月)
■注目判例
懲戒処分(諭旨退職処分)の有効性
日本ヒューレット・パッカード事件
最高裁第2小法廷(平成24年4月27日)
■ポイント
本件は、被害妄想など何らかの精神的な不調のために、有給休暇を全て取得した後、約40日間にわたり欠勤を続けた従業員について、会社が当該欠勤を懲戒事由に該当する無断欠勤としてなした諭旨退職処分の有効性が争われた事例である。精神疾患を有する従業員に対する対応という観点から注目される最高裁判決である。
本判決は、精神的な不調のために欠勤を続けている従業員に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるので、会社としては、精神科医による健康診断を実施するなどした上で、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとるべきであり、このような対応をとることなく、当該従業員の欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の懲戒処分の措置をとることは、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難く、従業員の欠勤は懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たらず、本件処分は、就業規則所定の懲戒事由を欠き、無効であるとした。
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目次
◆ 懲戒処分(諭旨退職処分)の有効性
日本ヒューレット・パッカード事件
最高裁第2小法廷(平成24年4月27日)
◆ 自然退職の効力の有効性,パワーハラスメント行為に対する損害賠償請求
医療法人健進会事件
大阪地裁(平成24年4月13日)判決
◆ 飲酒運転を理由とした懲戒免職の有効性
秋田県教育委員会事件
秋田地裁(平成24年3月23日)判決
◆ 勤務態度不良による雇止めの有効性
東日本旅客鉄道(雇止め)事件
東京地裁(平成24年4月10日)判決
◆ 派遣労働者に対する雇止めの有効性
いすゞ自動車事件
東京地裁(平成24年4月16日)判決
◆ 即時解雇の意思表示と解雇予告手当支払義務の存否
山口観光事件
大阪地裁(平成24年4月11日)(控訴審)判決
◆ 懲戒解雇該当性とその妥当性
国際自動車事件
東京地裁(平成24年4月24日)判決
◆ 大学教授の著作権侵害行為による懲戒免職処分の有効性
日本大学事件
東京地裁(平成24年4月17日)判決
◆ 整理解雇の有効性
クレディ・スイス証券事件
東京地裁(平成24年4月20日)判決
◆ 解雇事由の存否,未払賃金請求,未払時間外割増賃金支払請求
エルキュール事件
東京地裁(平成24年4月19日)判決
◆ 雇用契約期間途中での解雇の有効性
千代田女学園事件
東京地裁(平成24年4月17日)判決
◆ 自宅待機と差額賃金の支払請求の可否
INSOU事件
大阪地裁(平成24年4月26日)判決
◆ 経営破綻した外資系証券会社の元社員による賞与等支払請求
リーマン・ブラザーズ証券事件
東京地裁(平成24年4月10日)判決
◆ パワーハラスメントを理由とする損害賠償請求の可否
岩瀬コスファ事件
東京地裁(平成24年4月27日)判決
◆ 原子力発電所での勤務と疾病の発症及び死亡
中部電力事件
静岡地裁(平成24年3月23日)判決
◆ 不利益な内容に変更された給与規則の合理性
大阪府社会福祉事業団事件
大阪地裁(平成24年3月9日)判決
◆ 高校教諭のくも膜下出血発症の公務起因性
地方公務員災害補償基金(くも膜下出血)事件
甲府地裁(平成24年1月31日)判決
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