労働判例ジャーナル39号(2015年・6月)

■注目判例

セクハラを理由とする懲戒・降格処分取消請求

海遊館事件
最高裁第一小法廷(平成27年2月26日)判決

■ポイント

 本件は,水族館に勤務する男性従業員らが,それぞれ複数の女性従業員に対して性的な発言等のセクシュアル・ハラスメント等をしたことを懲戒事由として水族館から出勤停止の懲戒処分を受けるとともに,これらを受けたことを理由に下位の等級に降格されたことから,水族館に対し,出勤停止処分について懲戒事由の事実を欠き又は懲戒権を濫用したものとして無効であり,降格もまた無効であるなどとして水族館を訴えた事案である。
 本判決は,「職場におけるセクハラ行為については,被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも,職場の人間関係の悪化等を懸念して,加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや,……本件各行為の内容等に照らせば,仮に上記のような事情があったとしても,そのことをもって被上告人らに有利にしんしゃくすることは相当ではない」と明確に原審判決の判断を否定した。
 本最判は,セクハラ行為における被害者の態度について深い洞察を踏まえ,かつ会社の知るところとなりにくいセクハラ行為の特質を踏まえた適切な判断であると評価できる。

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目次

【注目判例】

◆ セクハラを理由とする懲戒・降格処分取消請求

海遊館事件

最高裁第一小法廷(平成27年2月26日判決)

◆ 降級処分の無効確認と差額賃金等請求

東京海上日動火災保険事件

札幌地裁(平成27年3月18日)判決

◆ 自殺に基づく遺族補償年金等不支給処分取消請求

国・秋田労基署長事件

秋田地裁(平成27年3月6日)判決

◆業務連動型報酬等の支払請求

クレディ・スイス証券事件

最高裁第一小法廷(平成27年3月5日)判決

◆うつ病自殺に基づく遺族補償給付等不支給処分取消請求

国・長崎労基署長事件

長崎地裁(平成27年3月2日)判決

◆店長による時間外勤務手当等支払請求

おいらせブランド推進協議会事件

八戸簡裁(平成27年2月27日)判決

◆ 北海道労働委員会の不当労働行為救済命令取消請求

北海道・北海道労委(北海道教育委員会)事件

札幌高裁(平成27年2月26日)判決

◆配転無効就労義務の不存在確認等請求

ジョンソン・エンド・ジョンソン事件

東京地裁(平成27年2月24日)判決

◆元従業員による解雇無効地位確認等請求

PCS事件

東京地裁(平成27年2月24日)判決

◆専門業務型裁量労働制不適用に基づく時間外割増賃金等請求

フューチャーインフィニティ事件

大阪地裁(平成27年2月20日)判決

◆宅配便ドライバーによる時間外労働割増賃金等支払請求

佐川急便事件

東京地裁(平成27年2月20日)判決

◆ 津波で死亡した職員の両親による農協に対する損害賠償請求

新岩手農業協同組合事件

盛岡地裁(平成27年2月20日)判決

◆ 東京都元職員の分限免職処分取消請求

東京都(都教委・都人事委員会)事件

東京地裁(平成27年2月18日)判決

◆ がんで死亡した労働者に対する安全配慮義務違反

一般財団法人友愛会事件

横浜地裁(平成27年2月17日)判決

◆ 精神障害発症後の自殺に基づく損害賠償請求

有沢製作所事件

新潟地裁高田支部(平成27年2月5日)判決

◆ うつ病自殺による遺族補償給付等不支給処分取消請求

国・北大阪労基署長(うつ病自殺)事件

大阪地裁(平成27年2月4日)判決

◆ 反復性うつ病性障害に基づく休業補償給付

国・中央労基署長(反復性うつ病性障害)事件

東京地裁(平成27年2月4日)判決

◆ 管理監督者の時間外割増賃金支払請求

フレイア事件

大阪地裁(平成27年1月30日)判決

◆ 鉄道会社社員の労災保険給付不支給決定取消請求

北大阪労基署長(西日本旅客鉄道)事件

大阪地裁(平成27年1月19日)判決

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