労働判例ジャーナル22号(2014年・1月)
■注目判例
不正行為と解雇の有効性
全日本自治体労働者共済生活協同組合島根県支部事件
広島高裁(平成25年10月23日)判決
■ポイント
従業員は、会社に対して、労働契約上誠実義務を負っているので(労働契約法3条4項参照)、従業員が企業の内部情報を不正に取得する行為は懲戒処分事由ないし解雇事由に該当する。問題は、この内部情報の取得行為が、会社または他の従業員の違法行為などを会社または第三者に通報することによって、これを是正しようとするときには、内部情報取得行為の違法性が免責される可能性がないわけではない。
原審と本判決との判断が逆転したのは、本件従業員の不正な情報取得行為についての評価の相違に依存するものである。事実関係の判断は慎重に行うべきであろうが、基本的には企業秩序違反行為を例外的に免責できるかが問われるのであり、公益目的であり、かつ、その情報取得がその目的に照らしてやむを得ないといえるかを従業員側が十分に立証することが求められる事例と言える。
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目次
◆ 不正行為と解雇の有効性
全日本自治体労働者共済生活協同組合島根県支部事件
広島高裁(平成25年10月23日)判決
◆ 能力不足による分限免職処分の妥当性
佐賀県教育委員会(分限免職)事件
佐賀地裁(平成25年10月18日)判決
◆ 業務委託契約と契約終了に関する合意の有無
グリーン事件
東京地裁(平成25年10月18日)判決
◆ 会社解散を理由とする解雇の妥当性
石川タクシー富士宮ほか事件
静岡地裁沼津支部(平成25年9月25日)判決
◆ 運転手の乗務コース変更による賃金減額
誠和運輸事件
大阪地裁(平成25年10月29日)判決
◆ 周知されていない給与規程に基づく退職金請求
社会福祉法人健心会事件
大阪地裁(平成25年10月29日)判決
◆ 黙示の雇用契約の成立の成否
ルネサスセミコンダクタ九州山口ほか事件
福岡高裁(平成25年10月28日)判決
◆ 親会社等に対する雇用契約の成立の成否
BASFジャパン事件
東京地裁(平成25年10月25日)判決
◆ 配達員らに負担させた費用の有効性
東陽ガス事件
東京地裁(平成25年10月24日)判決
◆ トラック運転手の時間外割増賃金
金本運送事件
大阪地裁(平成25年10月7日)判決
◆ 会社の謝罪強制に対する慰謝料請求
協和企業事件
東京地裁(平成25年10月9日)判決
◆ 定年した高校教諭に対する再任用の拒否
熊本県(国家賠償請求)事件
福岡高裁(平成25年9月27日)判決
◆ 生徒に対するいじめと安全配慮義務
一宮市(損害賠償請求)事件
名古屋地裁一宮支部(平成25年9月25日)判決
◆災害時の園長の態様に関する安全配慮義務
X学院・A幼稚園(安全配慮義務違反)事件
仙台地裁(平成25年9月17日)判決
◆ 依命休職処分の有効性
全日本海員組合事件
東京地裁(平成25年9月13日)判決
◆ 部活動中の事故への注意義務違反
X中学校事件
横浜地裁(平成25年9月6日)判決
◆ 教授のパワハラに基づく慰謝料等支払請求
国立大学法人神戸大学事件
神戸地裁(平成25年6月28日)判決
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