労働判例ジャーナル30号(2014年・9月)
■注目判例
違法な研修派遣命令に対する慰謝料等請求
学校法人東明館学園事件
佐賀地裁(平成26年6月17日)判決
■ポイント
本件は、学校法人に勤務する英語教員に対する予備校での研修派遣命令の有効性が問われた事案である。本件の研修が労働契約に基づく業務命令の範囲内であるかが問題となったのである。
出向は、自企業に在籍のまま、出向先企業の指揮命令を受けて出向先企業の業務に従事し、出向先企業とも労働契約関係があるものである。出向は、労働契約の相手方である企業以外の企業の業務に従事するものであるから、一般的な業務命令や配転とは区別され、労働者の同意を要すると解されている。もっとも、ここでいう同意とは、事前の包括的合意で足りるのであるが、それは、就業規則における抽象的な規定だけでは、労働者の同意があったとみることができないとされている(新日本製鐵(日鐡運輸第2)事件・最2小判平15・4・18参照)。
本件では、本件教員が最初から命令に異議をとどめて応じており、同意がないことが明らかであり、また、就業規則に出向に関する規定がないことから、出向命令に法的根拠がなく、法的効力が認められないとした。そして、本件命令に至る経緯を総合的に判断すると、研修としての実質のない、恣意的な命令であることから、本件命令が不法行為に該当するとして、慰謝料の請求が認められたものである。
また、本号では、日本航空(運航乗務員整理解雇)事件、日本航空(客室乗務員整理解雇事件)をダイジェスト掲載している。本判決は、基本的に原判決を引用し、控訴審における当事者の主張に応えるなどの補充を行っているものであり、重要なポイントについて、原判決の判示事項を含めて紹介する。
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目次
◆ 会社更生中の整理解雇無効・地位確認等請求
日本航空(運航乗務員整理解雇)事件
東京高裁(平成26年6月5日)判決
◆ 会社更生中の整理解雇無効・地位確認等請求
日本航空(客室乗務員整理解雇)事件
東京高裁(平成26年6月3日)判決
◆ 熱中症で死亡した亡従業員の損害賠償請求
N企画・S園事件
さいたま地裁秩父支部(平成26年6月27日)判決
◆カフェ店員の管理監督者該当性
decor事件
東京地裁(平成26年6月13日)判決
◆大学専任教員らの地位確認等請求
学校法人獨協学園事件
大阪高裁(平成26年6月12日)判決
◆ 懲戒免職・退職手当全部不支給の取消請求
東京都・東京都公営企業管理者交通局長事件
東京地裁(平成26年6月5日)判決
◆ 謹慎処分継続中の未払賃金等支払請求
日本中国友好協会事件
東京地裁(平成26年6月4日)判決
◆ 大学准教授の懲戒処分取消請求
国立大学法人佐賀大学事件
佐賀地裁(平成26年5月30日)判決
◆ 配転に基づく減額賃金等支払請求
ダイオーズ事件
東京地裁(平成26年5月29日)判決
◆未払賃金等の支払請求と地位確認等請求
サントス事件
横浜地裁(平成26年5月29日)判決
◆ 自殺に基づく遺族補償給付等不支給処分取消請求
国・大阪中央労基署長(自殺)事件
大阪地裁(平成26年5月28日)判決
◆ 脳梗塞に基づく療養補償給付等不支給処分取消請求
国・大阪西労基署長(脳梗塞発症)事件
大阪地裁(平成26年5月21日)判決
◆ 報復目的の業務命令に対する損害賠償
千葉県・千葉県病院局長事件
東京高裁(平成26年5月21日)判決
◆ 地位確認及び未払賃金請求
フレイア事件
東京地裁(平成26年5月16日)判決
◆ 未払賃金等支払請求と不当利得返還請求
ザ・ニュー・インディア・アシュアランス・カンパニー・リミテッド事件
東京地裁(平成26年5月16日)判決
◆ 道労委の発した不当労働行為救済命令取消請求
北海道・北海道労働委員会(渡島信用金庫)事件
札幌地裁(平成26年5月16日)判決
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