労働判例ジャーナル28号(2014年・7月)
■注目判例
時間外割増賃金支払請求
田口運送事件
横浜地裁(平成26年4月24日)判決
■ポイント
本件は運送会社のトラック運転手の未払い賃金請求事件である。争点は、(1)トラック運転手の待ち時間が労基法上の労働時間であるか休憩時間であるかという点と、(2)業績給の支払いが割増賃金の支払いにあたるかという点であった。いずれもすでに判例が確立している論点である。しかし、給与計算の単純化や時間外労働のルーズな管理のためか、本件会社のような実務は決して珍しいものではないと言われている。その意味で、本件のような事例を通して労働時間の概念と時間外割増賃金の支払いに関する判例法理を改めて確認しておくことが重要である。
本判決も、判例法理に従って、業績給の実際を判断し、その支払いには通常の労働時間に相当する部分が含まれており、仮に割増賃金に当たる部分が存在するとしても、これを通常の労働時間に相当する部分と明確に区別することはできないことから、時間外割増賃金の支払いであることを否定したものである。
手当などの名目による時間外割増賃金の一括払いが有効とされるためには、通常の労働時間にあたる部分と割増賃金に当たる部分が明確に区別されていること、その支給額が労基法所定の計算による割増賃金額を下回らないことが必要である。
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目次
◆ 派遣労働者の派遣先に対する地位確認等請求
日本赤十字社(スタッフサービス)事件
東京地裁(平成26年4月23日)判決
◆ 雇用契約上の権利を有する地位確認等請求
日新建物事件
東京地裁(平成26年4月18日)判決
◆ 雇止め無効地位確認と有給取得による手当減額
東豊商事事件
東京地裁(平成26年4月16日)判決
◆准教授の発言に基づく損害賠償請求
佐賀大学事件
佐賀地裁(平成26年4月25日)判決
◆障害に対する配慮に合意した労働契約上の地位確認等請求
阪神バス事件
神戸地裁尼崎支部(平成26年4月22日)判決
◆ 東京都職員の懲戒免職処分取消請求
東京都(懲戒免職処分取消請求)事件
東京地裁(平成26年4月21日)判決
◆ 新聞奨学生の未払時間外賃金等支払請求
ワイ・シー笹塚事件
東京地裁(平成26年4月16日)判決
◆ 従業員の暴力行為等に対する損害賠償請求
三井不動産ファシリティーズ事件
東京地裁(平成26年4月16日)判決
◆ 出向先に勤務する地位にないことの確認請求
東海旅客鉄道事件
東京地裁(平成26年4月15日)判決
◆非常勤看護助手の地位確認等請求
独立行政法人国立がん研究センター事件
東京地裁(平成26年4月11日)判決
◆ 管理監督者該当性と時間外割増賃金等請求
DIPS事件
東京地裁(平成26年4月4日)判決
◆ 市の個人情報提供の違法性
呉市営バス(個人情報保護条例違反)事件
広島地裁呉支部(平成26年2月27日)判決
◆ 介護員の自殺に対する損害賠償請求
社会福祉法人備前市社会福祉事業団事件
岡山地裁(平成26年4月23日)判決
◆ うつ病自殺に対する遺族補償給付等不支給処分取消請求
国・静岡労働基準監督署長事件
東京地裁(平成26年4月23日)判決
◆ 歓送迎会の送迎と事故死の業務起因性
国・行橋労基署長(交通事故による死亡)事件
東京地裁(平成26年4月14日)判決
◆ 二次会参加後の事故の通勤災害該当性
八重山労基署長(通勤災害)事件
東京地裁(平成26年3月24日)判決
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