労働判例ジャーナル33号（2014年・12月）

■注目判例

女性労働者の妊娠・出産を理由とする不利益取扱い

広島中央保健生活協同組合
最高裁第一小法廷（平成26年10月23日）

■ポイント

　最近，女性労働者の妊娠・出産に関連するハラスメント，すなわちマタニティ・ハラスメント（マタハラ）が問題とされることが多い。本判決は，妊娠中の女性の希望により，軽易な業務に転換することに伴って，降格措置をし，育児休業が終了し，復職して以降もその措置を継続したことが問題とされた事案であり，マタハラの防止という観点から社会的に注目を集めたものである。
　本件の１審判決（広島地判平24・２・23）および原審判決（広島高判平24・７・19）はともに，女性労働者の訴えを認めなかった。その理由は，本件措置が女性労働者の同意を得ており，また，組合の人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものであり，女性労働者の妊娠に伴う軽易な業務への転換請求のみをもって，その裁量権の範囲を逸脱して均等法９条３項の禁止する取扱いがされたものではないから，同項に違反する無効なものではないということであった。
　これに対して，最高裁が原審の判断を覆し，妊娠・出産に伴う女性労働者に対する人事措置の不利益性について，厳格な規範を示した。
　このように最高裁判決が妊娠・出産に係る不利益措置が均等法違反とならないための条件に関して厳格な規範を示したことは，妊娠・出産差別について重要な意義を有すると言える。

年間購読料：29,700円（27,000円＋税）※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です

年間購読お申込フォームへ

労働判例ジャーナル33号（2014年・12月）

目次

◆女性労働者の妊娠・出産を理由とする不利益取扱い

広島中央保健生活協同組合事件

◆ 大阪市長の建物使用不許可処分取消等請求

大阪市（大阪市役所労働組合・大阪市労働組合総連合）事件

◆ 水質検査に従事する労働者と心疾患の関係

国・島田労基署長（心疾患）事件

◆情報提供による労働組合への支配介入該当性

日本航空（東京都労委）事件

◆誹謗中傷の手紙送付による懲戒解雇

鹿苑寺事件

◆労働組合による未払賃金請求

アニマルケア事件

◆ マッサージ店練習生の未払賃金請求

ベストリラックス事件

◆コンビニ店長の割増賃金請求

泉レストラン事件

◆組合のビラ配布に対する訓告と不当労働行為

西日本旅客鉄道（中労委）事件

◆脳内出血発症に基づく療養補償給付不支給処分取消請求

国・厚木労基署長（脳内出血発症）事件

◆営業職の時間外手当請求

ワークスアプリケーションズ事件

◆ 強制的に辞表を書かされたこと等に基づく損害賠償請求

日本製薬事件

◆ 労働契約締結時の説明義務違反

日本アスペクトコア事件

◆ 退職に追い込む目的で行われた行為に対する損害賠償請求

メルシャン事件

◆ 非違行為による懲戒解雇された新聞記者の地位確認

朝日新聞社事件

◆ 解雇無効未払賃金請求及び損害賠償請求

ギャップ・ジャパン事件

◆ 医療法人の安全配慮義務違反による損害賠償請求

医療法人社団明照会事件

◆看護師のHIV感染情報の共有と個人情報保護法

社会医療法人Ｔ事件

◆ 懲戒処分等の無効確認請求

社会福祉法人大磯恒道会事件