労働判例ジャーナル149号(2024年・8月)

■注目判例

社宅利用制度における間接性差別

AGCグリーンテック事件

■ポイント

 本件は,本件会社が総合職のみに社宅制度を利用させ,一般職に社宅制度の利用を認めていないことが直接的な,または間接的な性差別として違法といえるかなどが法的な争点である。本件会社では,総合職とは,住居の移転を伴う配置転換に応じることができる従業員,と定義づけていたが,ほとんどが男性であった。これに対して,総合職以外の従業員が一般職であるが,ほとんど女性であった。
 本判決は,間接差別法理が均等法7条には抵触しない措置であっても,民法等の一般法理に照らし違法とされるべき場合は想定されるとして,均等法の厳格な範囲を超えて間接差別法理が適用される領域を拡大したことに大きな意義がある。本判決は,社宅制度の利用が転勤に応ずることができる従業員である総合職に限定するという性別以外の事由を要件とする措置であるが,総合職のほとんどが男性であることから男性に比して女性に相当程度の不利益を与えているとし,その措置についての会社側のいう理由に合理性がないとして均等法の趣旨から間接性差別の成立を認めたのである。

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目次

◆ 社宅利用制度における間接性差別

AGCグリーンテック事件

東京地裁(令和6年5月13日)判決

◆ 第三者名義口座への支払は無効であるとして,未払賃金等支払請求が一部認められた例

水工エンジニアリング事件

大阪地裁(令和6年5月31日)判決

◆ 諭旨解雇及び懲戒解雇無効地位確認等請求が認められた例

東和産業事件

東京地裁(令和6年5月30日)判決

◆ 休職期間満了時の退職扱い無効地位確認請求が認められた例

阪神高速技研事件

大阪地裁(令和6年5月21日)判決

◆ 団体交渉拒否行為に基づく損害賠償等請求が斥けられた例

春日井市事件

名古屋地裁(令和6年5月29日)判決

◆ 窃盗(荷抜き)を行ったことを理由とする未払退職金等支払請求が斥けられた例

焼津漁業協同組合事件

静岡地裁(令和6年5月23日)判決

◆ 機密情報持ち出し等を理由とする懲戒解雇が有効とされ地位確認等請求が斥けられた例

国立大学法人京都大学事件

京都地裁(令和6年5月14日)判決

◆ 時季変更権が適法である等として慰謝料請求を棄却した原判決が維持された例

東海旅客鉄道事件

大阪高裁(令和6年5月16日)判決

◆ 内部告発及び精神障害を理由とした解雇無効地位確認請求が認められた例

大津漁業協同組合事件

水戸地裁(令和6年4月26日)判決

◆ 配転命令無効,解雇無効地位確認等請求を認容した原判決の控訴が斥けられた例

函館バス事件

札幌高裁(令和6年4月25日)判決 50

◆ セクハラ・パワハラに基づく慰謝料等請求を一部認容した原判決が維持された例

損害賠償等請求(セクハラ・パワハラ)事件

高松高裁(令和6年4月24日)判決

◆ 中津市元職員の非違行為を理由とする退職手当金額返納命令取消請求が斥けられた例

中津市事件

大分地裁(令和6年4月12日)判決

◆ 亡労働者の心停止の発病に基づく損害賠償等請求が斥けられた例

愛知県健康づくり振興事業団事件

名古屋地裁(令和6年4月10日)判決

◆ 運行開始前点検行為に基づく未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

トーコー事件

大阪地裁(令和6年3月8日)判決

◆ 包丁を示して脅迫した行為を理由とする解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

解雇無効地位確認等請求事件

東京地裁(令和5年12月22日)判決

◆ 採用内定辞退扱いは採用内定の取消であるとして,地位確認請求が認められた例

FIRST DEVELOP事件

東京地裁(令和5年12月18日)判決

◆ セクハラを理由とする降格処分無効地位確認等請求が斥けられた例

大東建託事件

東京地裁(令和5年12月15日)判決

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