労働判例ジャーナル148号(2024年・7月)
■注目判例
職種限定契約と配転命令
社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件
■ポイント
本件は,社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会(「本件法人」という。)に雇用され,本件法人が指定管理者である福祉用具センターにおいて,福祉用具の改造等(「本件業務」という。)に係る技術職として勤務していた職員(「本件職員」という。)が,職種及び業務内容を技術職に限定する旨の合意(「本件合意」という。)にもかかわらず,本件職員の同意なしに本件法人が下した総務課施設管理担当への配置転換命令(「本件配転命令」という。)を違法として本件法人に損害賠償を請求した事案である。
本判決は,「労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には,使用者は,当該労働者に対し,その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しない」との規範を示し,原審判決が,本件法人が本件配転命令をする権限を有していたことを前提としていることを誤りとしたのである。本判決は,解雇回避という目的があることによって,職種限定の労働契約における配転命令権の範囲が広がるわけではないという理論的には当然なことを確認した重要な意義があると言える。
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目次
◆ 職種限定契約と配転命令
社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件
最高裁第二小法廷(令和6年4月26日)判決
◆ 亡労働者の心停止発症に基づく損害賠償等請求が一部認められた例
宮交ショップアンドレストラン承継人宮崎交通事件
宮崎地裁(令和6年5月15日)判決
◆ 懲戒解雇無効地位確認請求を認め損害賠償等請求を一部認めた原判決が維持された例
函館バス事件
札幌高裁(令和6年4月19日)判決
◆ 新幹線運転士の変形労働時間制適用無効に基づく未払賃金等支払請求が斥けられた例
東海旅客鉄道事件
大阪地裁(令和6年3月27日)判決
◆ 上司の叱責・非難による精神疾患発症に基づく公務外認定処分取消請求が認められた例
地方公務員災害補償基金宮崎県支部長事件
宮崎地裁(令和6年3月21日)判決
◆ 管理監督者に該当しないとして,未払割増賃金等支払請求が一部認められた例
日生米穀事件
大阪地裁(令和6年3月14日)判決
◆ 共産党員を理由とする昇給差別的取扱い等に基づく損害賠償請求が一部認められた例
日本原子力研究開発機構事件
水戸地裁(令和6年3月14日)判決
◆ 元教諭の不適切発言を理由とする停職処分取消請求が認められた例
鳥取県・県教委事件
鳥取地裁(令和6年3月8日)判決
◆ 原判決の年休取得についての慰謝料等請求を一部認容した部分が取り消された例
東海旅客鉄道事件
東京高裁(令和6年2月28日)判決
◆ 紹介予定派遣満了後の保健師らの地位確認等請求が斥けられた例
任天堂事件
京都地裁(令和6年2月27日)判決
◆ 原判決を変更し,上司の性的暴行等に基づく損害賠償等請求が一部認められた例
東京税理士会神田支部事件
東京高裁(令和6年2月22日)判決
◆ 上司のセクハラにつき,上司及び会社に対する損害賠償等請求が一部認められた例
エヌ・エル・エヌ事件
鳥取地裁(令和6年2月16日)判決
◆ 不正受給等を理由とする懲戒免職処分取消請求が認められた例
長崎県・県教委事件
福岡高裁(令和6年2月7日)判決
◆ 国及び自衛官らに対する暴行行為に基づく損害賠償等請求が一部認められた例
国・陸上自衛隊事件
熊本地裁(令和6年1月19日)判決
◆ 上司のセクシュアルハラスメントに基づく損害賠償等請求が一部認められた例
三菱UFJ新拓銀行ほか1社事件
東京地裁(令和5年12月25日)判決
◆ 覚醒剤摂取を理由とする懲戒解雇につき,未払退職金等支払請求が斥けられた例
小田急電鉄事件
東京地裁(令和5年12月19日)判決
◆ 降格は有効だが本俸減額は無効であるとして,未払賃金等支払請求が一部認められた例
住友不動産ベルサール事件
東京地裁(令和5年12月14日)判決
◆ 業務命令違反を理由とする懲戒処分・解雇無効地位確認等請求が斥けられた例
日経BPアド・パートナーズ事件
東京地裁(令和5年11月15日)判決
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