労働判例ジャーナル139号(2023年・10月)

■注目判例

定年後再雇用者と労契法20条

名古屋自動車学校事件

■ポイント

 本件は,無期労働契約の正職員と有期労働契約の嘱託職員の労働条件の格差が労契法旧20条に違反するかが争点となった事案であるが,本件の嘱託職員が正職員として定年退職した会社で雇用継続制度(高年法8条)の適用を受けた定年後再雇用者であったところに特徴がある。本件の原審判決(名古屋高判令4.3.25本誌126号38頁LEX/DB25592145)は,同様の事案である長澤運輸事件最高裁判決(最二小判平30.6.1)の基本的判断枠組みに基づいて判断したが,本判決は,長澤運輸事件最判以降の労契法旧20条に関する最高裁判決であるメトロコマース事件最高裁判決(最三小判令2.10.13)の示す基本的判断枠組みに基づいて,原審判決が本件の正職員と嘱託職員との基本給及び賞与(一時金)の相違について,それらの給与の性質及び目的を十分踏まえておらず,また,労使交渉に関する事情も適切に考慮せず,その相違の一部を労契法旧20条にいう不合理なものに当たるとした判断を誤りとして破棄し,差し戻す判断を下した。
 本判決は,正社員と定年後再雇用の嘱託社員との労働条件格差の中でも,基本給及び賞与についても,メトロコマース事件最判の示す判断枠組みに則して判断すべきことを示したという意義がある。それはまた,長澤運輸事件最判の判断枠組みをメトロコマース事件最判に枠組みによって補強ないし修正した意味があろう。

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目次

◆ 定年後再雇用者と労契法20条

名古屋自動車学校事件

最高裁第一小法廷(令和5年7月20日)判決

◆ 産休復帰後の医師の市に対する損害賠償等請求

日南市事件

宮崎地裁(令和5年7月12日)判決

◆ 亡教員の遺族の市と県に対する損害賠償等請求

滑川市事件

富山地裁(令和5年7月5日)判決

◆ 未払割増賃金及び未払退職金等の支払請求

ツヤデンタル事件

大阪地裁(令和5年6月29日)判決

◆ 給与規程の適用確認等請求

沖縄産業振興センター事件

那覇地裁(令和5年6月27日)判決

◆ みなし残業代と未払賃金等支払請求

PEEES事件

大阪地裁(令和5年6月23日)判決

◆ 街宣活動等による名誉棄損等に基づく損害賠償等請求

東京管理職ユニオン事件

東京地裁(令和5年6月14日)判決

◆ 代表役員(総長)の地位確認請求

神社本庁事件

東京高裁(令和5年6月14日)判決

◆ 臨時雇員に賞与を支給しないことの不合理性

ロイヤルホテル事件

大阪地裁(令和5年6月8日)判決

◆ 殺人未遂被疑者に対する休職処分等の有効性

プルデンシャル生命保険事件

大阪地裁(令和5年6月8日)判決

◆ 勤務成績不良等を理由とする分限免職処分の有効性

糸島市消防本部消防長(分限免職処分取消請求)事件

福岡高裁(令和5年6月8日)判決

◆ 大学非常勤講師の雇止め無効地位確認等請求

学校法人玉手山学園事件

京都地裁(令和5年5月19日)判決

◆ 勤務時間等管理に関する安全配慮義務違反の成否

青森市事件

仙台高裁(令和5年4月20日)判決

◆ 上司らの嫌がらせに基づく損害賠償等請求

ゆうちょ銀行事件

水戸地裁(令和5年4月14日)判決

◆ 組合員らの解雇と不当労働行為救済命令取消請求

広島県・広島県労委事件

広島地裁(令和5年3月27日)判決

◆ 雇止め又は解雇無効地位確認等請求

帝都葛飾交通ほか1社事件

東京地裁(令和5年1月27日)判決

◆ 違法配転命令に基づく慰謝料等請求

ジブラルタ生命保険事件

東京地裁(令和5年1月13日)判決

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