労働判例ジャーナル131号(2023年・2月)
■注目判例
退職合意の成立要件
近鉄住宅管理事件
■ポイント
労働契約の終了をめぐる紛争類型として退職の意思表示または退職合意の存否をめぐる問題がある。本件は,マンション管理員(本件従業員)と会社との退職合意の存在が否定された事案である。退職合意=合意解約は,一般に労働者の退職の申入れに対する使用者の承諾によって成立する。また,労働者の退職の申入れは,使用者の承諾があるまでは,これを撤回できると解されている。
本件では,会社は,本件従業員から電話で退職の申入れがあり,その日に承諾しているので,退職合意が成立したと主張していた。しかしながら,本判決は,本件従業員からの退職の申入れがあったこと自体に疑念を示している。
このように本判決は合意解約に関する一事例ではあるが,労働者の退職の申し出が確定的な意思であるかを慎重に判断する姿勢を示しており,今後の参考になると思われる。
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目次
◆ 退職合意の成立要件
近鉄住宅管理事件
大阪地裁(令和4年12月5日)判決
◆ 職務遂行能力欠如等を理由とする解雇の有効性
大尊製薬事件
大阪地裁(令和4年9月29日)判決
◆ 雇止め無効地位確認等請求
コード事件
京都地裁(令和4年9月21日)判決
◆ 無断欠勤等を理由とする解雇の有効性
キョーリツコーポレーション事件
大阪地裁(令和4年9月16日)判決
◆ 暴力団構成員交友等を理由とした解雇の有効性
高松テクノサービス事件
大阪地裁(令和4年9月15日)判決
◆ 無期転換逃れの雇止め無効地位確認等請求
日本通運事件
東京高裁(令和4年9月14日)判決
◆ うつ病発症及び悪化の公務起因性
地方公務員災害補償基金青森県支部長事件
青森地裁(令和4年9月9日)判決
◆ アイドルの労働基準法上の労働者性
Hプロジェクト事件
最高裁第三小法廷(令和4年9月7日)決定
◆再生計画と解雇無効地位確認請求
学校法人森友学園管財人事件
大阪地裁(令和4年9月7日)判決
◆ 配置転換・降格処分無効地位確認等請求
社会福祉法人櫛引福寿会事件
仙台高裁秋田支部(令和4年8月31日)判決
◆解散に伴う整理解雇の有効性
TRAD社会保険労務士法人事件
東京地裁(令和4年6月29日)判決
◆ 懲戒解雇の有効性と懲戒解雇無効地位確認等請求
スルガ銀行事件
東京地裁(令和4年6月23日)判決
◆ 退職の意思表示の成否
日東電工事件
広島高裁(令和4年6月22日)判決
◆ 雇止め無効地位確認等請求
グッドパートナーズ事件
東京地裁(令和4年6月22日)判決
◆ 人格権侵害等に基づく損害賠償等請求
reqiz事件
東京地裁(令和4年6月10日)判決
◆ 既払退職金等の返還請求
ジブラルタ生命保険事件
東京地裁(令和4年6月10日)判決
◆ コンビニ加盟者らの労働組合法上の労働者性
国・中労委(セブン‐イレブン・ジャパン)事件
東京地裁(令和4年6月6日)判決
◆ 業務報告の労働時間性
テイケイ事件
東京地裁(令和4年6月1日)判決
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