労働判例ジャーナル113号(2021年・8月)
■注目判例
性同一性障害者の性自認に対応するトイレの自由利用に対する制限
経済産業省職員(性同一性障害)事件
■ポイント
本件は,性同一性障害の経済産業省職員(以下,「本件職員」という)が自己の性自認する性別に対応するトイレの自由利用を制限する庁舎管理権に基づく経済産業省の措置が違法であり,国家賠償法に基づき損害賠償が認めたものである。また,本件職員は,経済産業省がとったトイレの利用制限を中止することなどについて人事院に措置要求をしたが,人事院は,この措置要求を認めなかった。そこで,本件職員が,人事院の判定の取消と国・経産省に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求した。
原審(東京地判令元・12・12,本誌96号)は,第1事件につき,本件判定のうち,本件職員が女性トイレを使用するためには性同一性障害者である旨を女性職員に告知して理解を求める必要があるとの経産省当局による条件を撤廃し,本件職員に職場の女性トイレを自由に使用させることとの要求を認めないとした部分を取り消すとともに,第2事件につき,経産省に対し,慰謝料132万円などの支払を命じたところ,これを不服とする本件職員及び国などがそれぞれ控訴をした。
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目次
性同一性障害者の性自認に対応するトイレの自由利用に対する制限
経済産業省職員(性同一性障害)事件
東京高裁(令和3年5月27日)判決
◆ 薬剤曝露による膀胱がん発症に基づく損害賠償等請求
三星化学工業事件
福井地裁(令和3年5月11日)判決
◆ 幼稚園教諭の精神障害発症の業務起因性
国・和歌山労基署長事件
和歌山地裁(令和3年4月23日)判決
◆ 市職員の双極性感情障害発症の公務起因性
地方公務員災害補償基金・愛知県支部長事件
名古屋地裁(令和3年4月19日)判決
◆ 自殺した亡労働者の精神障害発症の業務起因性
国・岐阜労基署長事件
名古屋地裁(令和3年4月19日)判決
◆ 雪上歩行訓練中の傷害の「公務上の災害」該当性
地方公務員災害補償基金・栃木県支部長事件
宇都宮地裁(令和3年3月31日)判決
◆ セクハラ行為に基づく慰謝料等請求
旭川公証人合同役場事件
旭川地裁(令和3年3月30日)判決
◆ 特別非常勤講師らの不再任用無効地位確認等請求
大阪府・府教委事件
大阪地裁(令和3年3月29日)判決
◆ 選挙等情報の私的利用を理由とする懲戒免職処分等の有効性
堺市事件
大阪地裁(令和3年3月29日)判決
◆ 組合についてのネット上の記事掲載等の不当労働行為該当性
国・中労委(シーフォービジネスインテグレーション)事件
東京地裁(令和3年3月25日)判決
◆ 諮問委員会の違法意見答申等に基づく損害賠償等請求
大阪府事件
大阪地裁(令和3年3月19日)判決
◆ 不正受給等に基づく免職処分後の退職願不提出と懲戒解雇の有効性
学校法人帝京大学事件
東京地裁(令和3年3月18日)判決
◆ 遺族補償給付等の変更処分取消請求
国・宮崎労基署長事件
東京地裁(令和3年3月18日)判決
◆ 法令違反行為の通報等を理由とする懲戒解雇の有効性
神社本庁事件
東京地裁(令和3年3月18日)判決
◆ 採用権限の有無と管理監督者該当性
カーチスホールディングス事件
東京地裁(令和3年3月17日)判決
◆ 試用期間中の解雇無効地位確認等請求
SOMPOケア事件
東京地裁(令和3年3月16日)判決
◆ パチンコ台設定情報漏洩を理由とする懲戒解雇の有効性
遊楽事件
東京地裁(令和3年3月10日)判決
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