労働判例ジャーナル67号(2017年・10月)
■注目判例
年俸の中に残業代を含むという合意の有効性
医療法人康心会事件
最高裁第二小法廷(平成29年7月7日)判決
■ポイント
本件は,医師の1700万円という高額の年俸における年俸額に割増賃金を含むという合意(以下,「本件合意」とする。)の有効性が争点となった事案である。判例は,割増賃金を含む定額賃金による支払いを直ちに違法とするものではないが,通常の労働時間に対する賃金部分と割増賃金の部分が判別できることを前提としている(高知県観光事件・最二小判平6・6・13,テックジャパン事件・最一小判平24・3・8)。本件の特徴は,医師という高度な専門職であって,かつ相当程度高額な賃金であっても,判例法理の適用があるかという点にあった。
本判決は,最高裁が割増賃金に関して厳格な立場をとることを改めて示した意義がある。
割増賃金に関する規定が罰則付きで使用者に強制されるものであるという観点からすると,業務の性質や支給される賃金が高額であることによって,その適用を除外することはできないと判断されたものと考えられ,実務に与える影響が大きいということができる。
年間購読料:29,700円(27,000円+税)※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です |
目次
◆ 年俸の中に残業代を含むという合意の有効性
医療法人康心会事件
最高裁第二小法廷(平成29年7月7日)判決
◆ 組合活動に基づく解雇無効地位確認等請求
北上京だんご本舗事件
仙台地裁(平成29年7月28日)判決
◆ 労働基準法上の管理監督者該当性
テーエス運輸事件
大阪地裁(平成29年7月20日)判決
◆ 労働組合に対する事前説明義務不存在確認請求
大阪府理容生活衛生同業組合労働組合事件
大阪地裁(平成29年7月12日)判決
◆ 解雇無効地位確認等請求と社宅明渡等請求
日経大阪中央販売事件
大阪地裁(平成29年7月7日)判決
◆ 医学部長の解任決議無効確認等請求
学校法人東京女子醫科大学事件
最高裁第二小法廷(平成29年6月30日)決定
◆ 労使慣行に基づく65歳以降の職員たる地位確認等請求
社会福祉法人光摂会事件
大阪地裁(平成29年6月30日)判決
◆ 降格処分前の地位確認等請求
大王製紙事件
最高裁第二小法廷(平成29年6月28日)決定
◆ 亡放射線技術職員の退職手当支給制限処分取消請求
甲府市事件
甲府地裁(平成29年6月27日)判決
◆ 国立研究開発法人研究員らの懲戒処分無効確認等請求
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター事件
名古屋高裁(平成29年6月15日)判決
◆ 公立学校教員の非違行為に基づく懲戒免職等処分取消請求
北海道・道教委事件
最高裁第三小法廷(平成29年6月13日)決定
◆ 配転の不当労働行為該当性の有無
サンプラザ事件
大阪地裁(平成29年6月12日)判決
◆ 元教諭のわいせつ行為に基づく退職手当返還処分取消請求
鹿児島県・鹿児島県教育委員会事件
鹿児島地裁(平成29年5月31日)判決
◆ 市職員の旧姓使用に基づく戒告処分取消等請求
防府市事件
山口地裁(平成29年4月19日)判決
◆ 亡教員のうつ病自殺に基づく公務外認定処分取消請求
地方公務員災害補償基金東京都支部長事件
東京高裁(平成29年2月23日)判決
◆ 自殺した亡労働者の両親による遺族補償給付不支給処分取消請求
国・品川労基署長事件
東京高裁(平成29年2月22日)判決
◆ 叱責と自殺の間の因果関係の有無
損害賠償請求控訴事件
大阪地裁(平成29年2月23日)判決
年間購読料:29,700円(27,000円+税)※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です |