労働紛争解決ファイル~実践から理論へ~

労働紛争解決ファイル~実践から理論へ~

日本の労働紛争解決システムを担う各機関は、「早い・安い・うまい」、つまり、短期間で・費用をかけず・適正な解決をという、労働紛争解決に託された3つの機能のうち、いずれかが欠落している。その結果、多様な解決機関が用意されているのに、その実績は諸外国と比べると桁違いに少ない。それは労働紛争自体が少ないからではなく、表に出すシステムが機能不全に陥っているからではないだろうか。

著者/所属 :野田 進

サイズ/ページ数 :A5版 並製 332ページ

ISBN :978-4-903613-03-1

価格 3,520円(本体3,200円+税) 数量

目次

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労働紛争解決制度の実情や課題を明らかにし、改革の方向性を提言 

 

労働紛争実務に基づく労働局あっせんの理論的課題から、
「労働委員会法」の立法構想まで 

 

はしがき i

略語表 ix

序 説 個別労働関係紛争と解決システム

  1. はじめに 3
  2. 多様な労働紛争と解決システム 4
  3. 労働紛争解決システムの現状 6
  4. 労働実体法と労働紛争手続法 10

 

第1章 個別労働紛争「あっせん」ファイル 13

はじめに 15

第1節 あっせんのメリット・デメリット
―若年労働者の職業的自信― 16

  1. はじめに―個別的紛争解決の「流れ」 16
  2. 紛争解決の各システムの特色 17
  3. 各制度の関連とあっせん 23
  4. 「いじめ・嫌がらせ」事案にみる
    あっせんのメリット・デメリット 26

第2節 金銭解決の功罪
―「ベテラン仕事人」たちのプライド― 32

  1. はじめに 32
  2. 解雇事件における「金銭解決」 34
  3. ベテラン仕事人にとっての真の解決 37

第3節 あっせん内容における「適正」性 42

  1. はじめに 42
  2. あっせんの「適正」性の法的位置づけ 43
  3. あっせんの「適正」性に関する事案 47
  4. あっせんの「適正」性とは 50
  5. 5.むすび 54

第4節 メンタルヘルス関係紛争の「解決」 55

  1. はじめに―紛争解決とメンタルヘルス― 55
  2. メンタルヘルスと個別労働関係紛争 56
  3. あっせん現場での課題 61
  4. メンタルヘルス関連紛争でのあっせんの役割 65

第5節 あっせんにおける労契法16条の逆作用
―いかにして「解雇させる」か― 67

  1. 解雇紛争のあっせん的特色 67
  2. 解雇の実情の把握 69
  3. 解雇の実情に即した解決 75

第6節 あっせん制度の手続―法制と実務との乖離― 79

  1. はじめに 79
  2. あっせん手続の流れ 80
  3. あっせん手続における課題 88
  4. 法制と実務との乖離 93

第7節 あっせん技術論―「技術」の可能性と限界― 95

  1. はじめに 95
  2. あっせん技術の理論 96
  3. 実践的あっせん技術論 103
  4. むすびにかえて―あっせんとwinning 111

第8節 あっせん制度の課題
―「迅速,低廉,適正」性の確保のために― 113

  1. はじめに―申立・新受件数の減少― 113
  2. 迅速・低廉・適正な解決 114
  3. あっせんへのアクセス 117
  4. 「専門性」の課題 119
  5. 5.「適正な」解決の保障 121

 

第2章 諸外国の個別労働紛争解決「聞き歩き」ファイル 127

はじめに 129

第1節 中国における労働紛争の裁判外解決システム 130

  1. はじめに 130
  2. 中国の労働紛争解決システム概観 131
  3. 労働調停の制度と実情 134
  4. 労働仲裁の制度と実情 137
  5. 5.まとめ=中国における労働紛争仲裁制度の理解 146

第2節 韓国における不当解雇等の労働委員会による救済 148

  1. はじめに 148
  2. 不当解雇等およびその救済システム(付・差別是正制度) 149
  3. 紛争解決の実情 154
  4. 不当解雇等の救済制度の実情 156
  5. 5.むすび 164

第3節 台湾における労使紛争解決制度と民間委託あっせん 165

  1. はじめに 165
  2. 労働紛争解決システムの概要 166
  3. 調停の実情(付・労働相談) 172
  4. 委託民間団体におけるあっせんの実情 175
  5. 5.むすび 179

第4節 フランスにおける個別労働紛争の調整的解決最前線 182

  1. はじめに 182
  2. フランスの労働審判における調停 183
  3. 調停手続の仕組みと流れ 185
  4. 義務的調停の運用 188
  5. 5.調停比率の低下と対策 190
  6. 6.調停制度の評価 193
  7. 7.むすび 194

第5節 イギリス労働紛争解決システムにおける調停
―ETとACASの制度的関連― 196

  1. はじめに 196
  2. イギリス労働紛争解決システムの概略 198
  3. 労働紛争解決における調停と審判の連携 212
  4. むすび―日本への示唆― 219

第6節 比較の中の日本の位置 222

  1. はじめに 222
  2. 各国における労働紛争解決の共通性と独自性
    (東アジア諸国を中心に) 224
  3. 日本の労働紛争解決システムの位置と課題 237

 

第3章 労働紛争解決システムの全体像 241

はじめに 243

第1節 労働審判制度の課題

Ⅰ 労働実体法からみた労働審判 244

  1. 労働審判制度と個別的労働関係法 244
  2. 労働審判の実情 246
  3. 労働実体法(労働契約法)からみた労働審判制度 256
  4. むすび 263

Ⅱ 労働委員会からみた労働審判制度 264

  1. 労働審判制度のあり方をめぐって 264
  2. 労働審判員の参加 265
  3. 迅速・簡易な審理 267
  4. 調整的解決の組み合わせ 269
  5. 5.事案の実情に即した解決 270
  6. 6.むすびにかえて 272

Ⅲ 労働審判における「調停的審判」の課題
―ある東京地裁判決の問題提起― 273

  1. 労働審判制度の現状 273
  2. 「調停の成立による解決を優先する労働審判」 274
  3. 「調停的審判」の問題点 277

4.まとめ 279

第2節 労働委員会の個別労働紛争あっせん

Ⅰ 労働委員会あっせんの独自性 280

  1. はじめに 280
  2. 個別労働関係紛争の多様な解決制度 280
  3. 労働審判制度の概要と課題 285
  4. 労働局あっせん制度 290
  5. 5.道府県労働委員会のあっせんの課題 293
  6. 6.むすび 298

Ⅱ 労働委員会あっせんの新たな可能性
―紛争解決のアクセシビリティー― 299

  1. 個別労働紛争解決におけるADR機能 299
  2. 紛争偏在とアクセシビリティー 301
  3. 労働委員会等あっせんの役割と課題 303
  4. むすび―アクセシビリティーの展望 306

 

終章 制度改革への展望 307

第1節 個別労働関係紛争解決システムの課題 309

  1. 課題の集約 309
  2. 企業の対処方針と人事法務 311
  3. 紛争解決システムにおける今後の展望 314

第2節 「労働委員会法」構想とその課題 317

  1. はじめに 317
  2. 労働委員会制度を取り巻く現状 318
  3. 労働委員会制度の改革の課題 322
  4. 「労働委員会法」の展望 325
  5. 5.むすび 329

索 引 330

著者紹介

野田 進


九州大学教授


1950年,福岡県生まれ。神戸大学卒業。会社勤務の後,東京大学大学院法学政治学研究科博士後期課程単位修得。大阪大学助教授を経て,1992年より,九州大学教授。博士(法学)。


主な著書


『労働契約の変更と解雇』(信山社,1997)
『「休暇」労働法の研究』(日本評論社,1999)
『事例判例労働法』(弘文堂,2011)
『休み方の知恵』(共著・有斐閣,1992)
『働き方の知恵』(共著・有斐閣,1999)
『国立大学法人の労働関係ハンドブック』(共著・商事法務,2004)
『労働法ロールプレイング』(共著・有斐閣,2000)
『シネマで法学(第2版)』(共編著・有斐閣,2006)
『労働法の世界(第9版)』(共著・有斐閣,2011)
『判例労働法入門(第2版)』(編著・有斐閣,2011)』
『判例チャートで学ぶ労働法』(共編著・法律文化社,2011)

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