労働紛争解決ファイル~実践から理論へ~
目次
労働紛争解決制度の実情や課題を明らかにし、改革の方向性を提言
労働紛争実務に基づく労働局あっせんの理論的課題から、
「労働委員会法」の立法構想まで
はしがき i
略語表 ix
序 説 個別労働関係紛争と解決システム
- はじめに 3
- 多様な労働紛争と解決システム 4
- 労働紛争解決システムの現状 6
- 労働実体法と労働紛争手続法 10
第1章 個別労働紛争「あっせん」ファイル 13
はじめに 15
第1節 あっせんのメリット・デメリット
―若年労働者の職業的自信― 16
- はじめに―個別的紛争解決の「流れ」 16
- 紛争解決の各システムの特色 17
- 各制度の関連とあっせん 23
- 「いじめ・嫌がらせ」事案にみる
あっせんのメリット・デメリット 26
第2節 金銭解決の功罪
―「ベテラン仕事人」たちのプライド― 32
- はじめに 32
- 解雇事件における「金銭解決」 34
- ベテラン仕事人にとっての真の解決 37
第3節 あっせん内容における「適正」性 42
- はじめに 42
- あっせんの「適正」性の法的位置づけ 43
- あっせんの「適正」性に関する事案 47
- あっせんの「適正」性とは 50
- 5.むすび 54
第4節 メンタルヘルス関係紛争の「解決」 55
- はじめに―紛争解決とメンタルヘルス― 55
- メンタルヘルスと個別労働関係紛争 56
- あっせん現場での課題 61
- メンタルヘルス関連紛争でのあっせんの役割 65
第5節 あっせんにおける労契法16条の逆作用
―いかにして「解雇させる」か― 67
- 解雇紛争のあっせん的特色 67
- 解雇の実情の把握 69
- 解雇の実情に即した解決 75
第6節 あっせん制度の手続―法制と実務との乖離― 79
- はじめに 79
- あっせん手続の流れ 80
- あっせん手続における課題 88
- 法制と実務との乖離 93
第7節 あっせん技術論―「技術」の可能性と限界― 95
- はじめに 95
- あっせん技術の理論 96
- 実践的あっせん技術論 103
- むすびにかえて―あっせんとwinning 111
第8節 あっせん制度の課題
―「迅速,低廉,適正」性の確保のために― 113
- はじめに―申立・新受件数の減少― 113
- 迅速・低廉・適正な解決 114
- あっせんへのアクセス 117
- 「専門性」の課題 119
- 5.「適正な」解決の保障 121
第2章 諸外国の個別労働紛争解決「聞き歩き」ファイル 127
はじめに 129
第1節 中国における労働紛争の裁判外解決システム 130
- はじめに 130
- 中国の労働紛争解決システム概観 131
- 労働調停の制度と実情 134
- 労働仲裁の制度と実情 137
- 5.まとめ=中国における労働紛争仲裁制度の理解 146
第2節 韓国における不当解雇等の労働委員会による救済 148
- はじめに 148
- 不当解雇等およびその救済システム(付・差別是正制度) 149
- 紛争解決の実情 154
- 不当解雇等の救済制度の実情 156
- 5.むすび 164
第3節 台湾における労使紛争解決制度と民間委託あっせん 165
- はじめに 165
- 労働紛争解決システムの概要 166
- 調停の実情(付・労働相談) 172
- 委託民間団体におけるあっせんの実情 175
- 5.むすび 179
第4節 フランスにおける個別労働紛争の調整的解決最前線 182
- はじめに 182
- フランスの労働審判における調停 183
- 調停手続の仕組みと流れ 185
- 義務的調停の運用 188
- 5.調停比率の低下と対策 190
- 6.調停制度の評価 193
- 7.むすび 194
第5節 イギリス労働紛争解決システムにおける調停
―ETとACASの制度的関連― 196
- はじめに 196
- イギリス労働紛争解決システムの概略 198
- 労働紛争解決における調停と審判の連携 212
- むすび―日本への示唆― 219
第6節 比較の中の日本の位置 222
- はじめに 222
- 各国における労働紛争解決の共通性と独自性
(東アジア諸国を中心に) 224 - 日本の労働紛争解決システムの位置と課題 237
第3章 労働紛争解決システムの全体像 241
はじめに 243
第1節 労働審判制度の課題
Ⅰ 労働実体法からみた労働審判 244
- 労働審判制度と個別的労働関係法 244
- 労働審判の実情 246
- 労働実体法(労働契約法)からみた労働審判制度 256
- むすび 263
Ⅱ 労働委員会からみた労働審判制度 264
- 労働審判制度のあり方をめぐって 264
- 労働審判員の参加 265
- 迅速・簡易な審理 267
- 調整的解決の組み合わせ 269
- 5.事案の実情に即した解決 270
- 6.むすびにかえて 272
Ⅲ 労働審判における「調停的審判」の課題
―ある東京地裁判決の問題提起― 273
- 労働審判制度の現状 273
- 「調停の成立による解決を優先する労働審判」 274
- 「調停的審判」の問題点 277
4.まとめ 279
第2節 労働委員会の個別労働紛争あっせん
Ⅰ 労働委員会あっせんの独自性 280
- はじめに 280
- 個別労働関係紛争の多様な解決制度 280
- 労働審判制度の概要と課題 285
- 労働局あっせん制度 290
- 5.道府県労働委員会のあっせんの課題 293
- 6.むすび 298
Ⅱ 労働委員会あっせんの新たな可能性
―紛争解決のアクセシビリティー― 299
- 個別労働紛争解決におけるADR機能 299
- 紛争偏在とアクセシビリティー 301
- 労働委員会等あっせんの役割と課題 303
- むすび―アクセシビリティーの展望 306
終章 制度改革への展望 307
第1節 個別労働関係紛争解決システムの課題 309
- 課題の集約 309
- 企業の対処方針と人事法務 311
- 紛争解決システムにおける今後の展望 314
第2節 「労働委員会法」構想とその課題 317
- はじめに 317
- 労働委員会制度を取り巻く現状 318
- 労働委員会制度の改革の課題 322
- 「労働委員会法」の展望 325
- 5.むすび 329
索 引 330
著者紹介
九州大学教授
1950年,福岡県生まれ。神戸大学卒業。会社勤務の後,東京大学大学院法学政治学研究科博士後期課程単位修得。大阪大学助教授を経て,1992年より,九州大学教授。博士(法学)。
主な著書
『労働契約の変更と解雇』(信山社,1997)
『「休暇」労働法の研究』(日本評論社,1999)
『事例判例労働法』(弘文堂,2011)
『休み方の知恵』(共著・有斐閣,1992)
『働き方の知恵』(共著・有斐閣,1999)
『国立大学法人の労働関係ハンドブック』(共著・商事法務,2004)
『労働法ロールプレイング』(共著・有斐閣,2000)
『シネマで法学(第2版)』(共編著・有斐閣,2006)
『労働法の世界(第9版)』(共著・有斐閣,2011)
『判例労働法入門(第2版)』(編著・有斐閣,2011)』
『判例チャートで学ぶ労働法』(共編著・法律文化社,2011)