労働判例ジャーナル48号(2016年・3月)

■注目判例

正社員と契約社員の労働条件格差の合理性

ハマキョウレックス事件
大津地裁彦根支部(平成27年9月16日)判決

■ポイント

 この事件は,正社員と契約社員との労働条件の相違が労契法20条のいう「不合理なもの」と言えるかが争われた貴重な事案である。
 労契法20条は,有期労働契約であることを理由とする不合理な労働条件の相違を禁止しているが,その判断に当たっては,①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(これをまとめて「職務の内容」という。),②当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮することとしている。もっとも,この条文の表現によっては,正社員と契約社員との職務内容および人事異動の範囲にどの程度の相違があるときに不合理と判断されるかは自明ではない。結局は,裁判例の積み重ねにゆだねられていると考えざるを得ないであろう。その意味でも,本件は,その一事例としての意義を有するのである。
 本判決は,正社員と契約社員との当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情の考慮から,通勤手当を除く諸手当,一時金,定期昇給および退職金についての相違を一律に不合理なものではないとしているが,このような判断手法が適当といえるかは議論の余地が残されていよう。また,労契法20条違反について,補充的効力を認める規定がないことから,不法行為責任を生ずるにとどまるとしたことは,本件の具体的事情のもとでは妥当と言えるが,この点も今後の議論の対象となるであろう。

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目次

◆ 正社員と契約社員の労働条件格差の合理性

ハマキョウレックス事件

大津地裁彦根支部(平成27年9月16日)判決

◆ 地下鉄従業員の痴漢行為に基づく諭旨解雇処分

東京地下鉄事件

東京地裁(平成27年12月25日)判決

◆ 違法な評価に基づく差額賃金支払請求

東京ビッグサイト事件

東京地裁(平成27年12月25日)判決

◆ 就労拒絶に基づく未払賃金等支払請求

SBSファイナンス事件

東京地裁(平成27年12月16日)判決

◆ NHK集金人の労働契約に基づく地位確認等請求

日本放送協会事件

大阪地裁(平成27年11月30日)判決

◆ 和解交渉中の解雇の有効性

第一不動産鑑定所事件

仙台地裁(平成27年11月27日)判決

◆ ハラスメント等を理由とする損害賠償請求

アーネストワン事件

東京地裁(平成27年11月27日)判決

◆ 退職の意思表示撤回に基づく地位確認等請求

神戸事件

大阪地裁(平成27年11月26日)判決

◆ 楽団員による解雇無効地位確認等請求

公益財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団事件

横浜地裁(平成27年11月26日)判決

◆ 反応性うつ病に基づく療養補償給付不支給処分取消請求

国・横浜北労基署長(反応性うつ病)事件

東京地裁(平成27年11月26日)判決

◆ 受動喫煙等に基づく損害賠償等請求

自動車教習所(受動喫煙)事件

横浜地裁(平成27年11月19日)判決

◆ アナウンサーのNHKに対する解雇無効地位確認等請求

日本放送協会事件

東京地裁(平成27年11月16日)判決

◆ 高年齢者の継続雇用上の地位確認等請求

日本郵便事件

東京高裁(平成27年11月5日)判決

◆ 市職員による懲戒免職処分等取消請求

大阪市(懲戒免職処分)事件

大阪地裁(平成27年11月9日)判決

◆ 事業場外勤務労働者の時間外割増賃金等支払請求

東京薬品事件

東京地裁(平成27年10月30日)判決

◆ 再雇用制度の選択による精神的負荷

国・大分労基署長事件

大分地裁(平成27年10月29日)判決

◆ 解雇ないし雇止めの無効と地位確認等請求

三洋電機事件

鳥取地裁(平成27年10月16日)判決

◆ 休職期間満了による自動退職の有効性

カプコン事件

大阪地裁(平成27年9月4日)判決

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