労働判例ジャーナル42号(2015年・9月)
■注目判例
組織的な嫌がらせと退職勧奨
大和証券・日の出証券事件
大阪地裁(平成27年4月24日)判決
■ポイント
本件は,大手証券会社の小会社である証券会社に出向して同社で営業業務に従事していた従業員が,そもそも転籍の合意は成立していない又は無効であるなどとして,転籍元に対し,労働契約に基づき,労働者たる権利を有する地位にあることの確認及び転籍後の賃金の支払を求めるとともに,転籍先に出向した後,上司から様々な嫌がらせを受けて精神的損害を被ったが,これらの行為は,両社が共謀して行ったものであるとして,共同不法行為に基づき,両社に対し,連帯して,慰謝料200万円などの支払を求めた事案である。
従って,本件の争点は,①転籍合意の成否,②転籍先での種々の行為が本件従業員に対する嫌がらせであり,不法行為にあたるか,及び③転籍元が不法行為責任を負うかである。
本件従業員に対する嫌がらせが不法行為にあたるかであるが,転籍先が,本件従業員を隔離したこと,約1年にわたり新規顧客開拓業務に専従させ,1日100件訪問するよう指示したこと,本件従業員の営業活動により取引を希望した者の口座開設を拒否したことなどが本件従業員に対する嫌がらせであり,不法行為に該当するとされた。いずれの行為も,特定の従業員を退職に追い込む手段として典型的なものであり,労働者の人格権を侵害するとも言うべきものであり,事実認定を前提とする以上,これらの行為が不法行為にあたるとの判断は妥当である。
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目次
【注目判例】
◆ 組織的な嫌がらせと退職勧奨
大和証券・日の出証券事件
大阪地裁(平成27年4月24日)判決
◆ 会社による雇用契約不存在確認等請求
ブルームバーグ・エル・ピー事件
東京地裁(平成27年5月28日)判決
◆ 妄想性障害に基づく休職命令無効等確認
日本ヒューレット・パッカード事件
東京地裁(平成27年5月28日)判決
◆ 学生の死に基づく教員と大学に対する損害賠償請求
国立大学法人東北大学事件
岡山地裁(平成27年5月26日)判決
◆ 原発復旧作業中に死亡した労働者の妻による損害賠償請求
東京電力ほか3社事件
東京高裁(平成27年5月21日)判決
◆ 市バス運転手の調整時間に対する時間外割増賃金
北九州市ほか事件
福岡地裁(平成27年5月20日)判決
◆ 証券会社の短期雇用契約社員による解雇無効等請求
あい証券事件
東京地裁(平成27年5月19日)判決
◆ 京大職員の就業規則不利益変更無効と減額賃金支払請求
国立大学法人京都大学事件
京都地裁(平成27年5月7日)判決
◆ トラブルに基づく解雇無効地位確認等請求
松尾工業所事件
東京地 裁(平成27年4月28日)判決
◆ 医師の酒気帯び運転に基づく懲戒免職等取消請求
奥州市・岩手県市町村総合事務組合事件
仙台高裁(平成27年4月27日)判決
◆ 会社代表者に対する人格権侵害等に基づく損害賠償請求
カンリ事件
静岡地裁(平成27年4月24日)判決
◆ 閉鎖となった短大教員による解雇無効地位確認等請求
学校法人専修大学事件
札幌高裁(平成27年4月24日)判決
◆ 指導教員の侮辱的発言についての大学の責任
国立大学法人佐賀大学事件
福岡高裁(平成27年4月20日)判決
◆ 出張費不正受給に対する会社の損害賠償請求
日立製作所ほか事件
東京地裁(平成27年4月17日)判決
◆ 職安職員らの行為に基づく国に対する損害賠償等請求
国・あいりん労働公共職業安定所事件
大阪地裁(平成27年4月16日)判決
◆ ネクタイ着用を義務付ける服装規定の合理性
エリゼ事件
大阪地裁(平成27年4月14日)判決
◆ 期間労働者及び派遣労働者による地位確認等請求
いすゞ自動車事件
東京高裁(平成27年3月26日)判決
◆ 黙示の雇用契約に基づく地位確認等請求
DNPファインオプトロニクスほか事件
さいたま地裁(平成27年3月25日)判決
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