労働判例ジャーナル36号(2015年・3月)
■注目判例
療養休職期間満了に基づく解雇無効地位確認等請求
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件
東京地裁(平成26年11月26日)判決
■ポイント
本件は,うつ病にり患し,業務外傷病者として会社の療養休職によって休職していた従業員(以下,「本件休職従業員」という。)について,会社が療養期間満了の時点で,当該従業員の療養休職事由が消滅していないとして解雇(以下,「本件解雇」という。)したことに対し,当該従業員が本件解雇を無効として争ったものである。
うつ病などの精神疾患のために休業した従業員の復職をめぐる法的紛争の増加は最近の裁判例の特徴の一つであり,本判決もその一事例ということができる。
本判決は,「休職制度が,一般的に業務外の傷病により債務の本旨に従った労務の提供ができない労働者に対し,使用者が労働契約関係は存続させながら,労務への従事を禁止又は免除することにより,休職期間満了までの間,解雇を猶予するという性格を有していることからすれば,使用者が休職制度を設けるか否かやその制度設計については,基本的に使用者の合理的な裁量に委ねられている」としながらも,「厚生労働省が公表している『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(平成21年3月改訂)から,本件内規中に掲げた本件判定基準9項目を全て満たした場合にのみ復職を可能であるとする運用を導くことは困難だとして,会社の判断が「原告の復職を著しく困難にする不合理なものであり,その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものというべきである」と判断した。この判示が厚生労働省の手引きをどのように位置付けているのかは必ずしも明らかではないが,会社の休職制度の運用に関する裁量の適法性を判断する重要な要素としていることが注目される。
この他,復職基準をより厳しく変更した就業規則が合理性を欠くものとして本件休職従業員を拘束しないと判断されている。
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目次
【注目判例】
◆ 療養休職期間満了に基づく解雇無効地位確認等請求
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件
東京地裁(平成26年11月26日)判決
◆ パワハラに基づく損害賠償請求
ベクター・ジャパン事件
東京地裁(平成26年11月28日)判決
◆ 雇止め無効地位確認等請求
横倉運送事件
東京地裁(平成26年11月27日)判決
◆病院によるストライキ禁止命令と損害賠償請求
三重一般労働組合鈴鹿さくら病院分会事件
名古屋高裁(平成26年11月27日)判決
◆配転命令の必要性と無効確認等請求
公益財団法人えどがわ環境財団事件
東京地裁(平成26年11月26日)判決
◆雇止め無効地位確認等請求
みずほ証券事件
東京地裁(平成26年11月21日)判決
◆ 夫の留学に同行する労働者の失業給付受給期間延長申請
国・草加公共職業安定所長事件
東京地裁(平成26年11月21日)判決
◆自衛官による懲戒処分取消等請求
国・防衛省情報本部長(懲戒処分取消請求)事件
東京地裁(平成26年11月20日)判決
◆暴力行為を理由とする退職金支給制限
東京都教育委員会(退職金)事件
東京地裁(平成26年11月20日)判決
◆強盗による懲戒解雇と未払退職手当支払請求
中日本ハイウェイ・パトロール東京事件
東京地裁(平成26年11月14日)判決
◆隠蔽行為等に基づく解雇無効等請求
東京エムケイ事件
東京地裁(平成26年11月12日)判決
◆ 競業避止義務違反に基づく損害賠償請求
すみれ介護事件
東京地裁(平成26年11月7日)判決
◆ 秘密保持義務違反を理由とする解雇
アイテック事件
東京地裁(平成26年11月7日)判決
◆ 職場離脱を理由とする懲戒処分取消請求
奈良市(懲戒処分取消請求)事件
奈良地裁(平成26年11月6日)判決
◆ 合同労組に対する支配介入に基づく損害賠償請求
有限会社平成タクシー事件
広島地裁(平成26年10月30日)判決
◆ 定年後の再雇用者による解雇無効等請求
セコムスタティック関西事件
大阪地裁(平成26年10月30日)判決
◆ 自宅待機命令に対する損害賠償請求
ハウス食品事件
大阪地裁(平成26年10月24日)判決
◆ うつ病自殺した労働者の未払賃金等支払請求
不二商事事件
大阪地裁(平成26年10月21日)判決
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