労働判例ジャーナル29号(2014年・8月)
■注目判例
上司のパワハラ行為に基づく会社及び上司に対する損害賠償請求
大裕事件
大阪地裁(平成26年4月11日)判決
■ポイント
本件は、上司によるパワーハラスメント行為(以下「パワハラ行為」)を受けて、精神障害を発症し、欠勤を続けた被害女性が、会社に業務外傷病の休職規定を適用され、自然退職扱いとされたため、従業員としての地位確認、パワハラ行為の加害者である上司および会社に対する損害賠償などを請求した事件である。
本判決は、上司による感情的な叱責について、その叱責の態様・内容・状況、注意・指導の必要性、上司と被害女性の従前の人間関係、被害女性に与えた心理的負荷の程度等に照らし、業務上の指導の範囲を著しく逸脱し、被害女性の人格権を侵害するものであるとした。
職場のパワハラ行為をめぐる労働紛争が頻発するなか、これまでも、上司のメールによる叱咤激励を不法行為としたA保険会社事件・東京高判平17・4・20、上司の厳しい指導について業務上の指示の範囲内とした医療法人財団健和会事件・東京地判平21・10・15などがある。本判決もその一事例であるが、パワハラ行為をめぐって検討すべき諸論点が判断されており、参考に値する裁判例と言える。
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目次
【注目判例】上司のパワハラ行為に基づく会社及び上司に対する損害賠償請求
大裕事件
大阪地裁(平成26年4月11日)判決
◆ 亡医師の自殺に基づく両親による損害賠償請求
公立八鹿病院組合事件
鳥取地裁米子支部(平成26年5月26日)判決
◆ 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求
愛知県(愛知県立横須賀高等学校)事件
名古屋地裁半田支部(平成26年5月22日)判決
◆ 有給休暇取得に基づく未払賃金請求
国・法務大臣事件
那覇地裁(平成26年5月21日)判決
◆違法な配転命令に基づく損害賠償請求
西日本電信電話事件
大阪地裁(平成26年4月25日)判決
◆専属芸術家の雇用契約と不法行為に対する損害賠償請求
ネクスト事件
東京地裁(平成26年4月24日)判決
◆ 女性歯科医師の熊本市に対する損害賠償請求
熊本市(セクハラ等)事件
熊本地裁(平成26年4月24日)判決
◆ 上司らの予見可能性と国家賠償請求
海上自衛隊(いじめ自殺)事件
東京高裁(平成26年4月23日)判決
◆ 休職期間満了退職と労務の受領拒絶
北港観光バス事件
大阪高裁(平成26年4月23日)判決
◆ 使用者の責めに帰すべき事由による未払賃金請求
学校法人市邨学園事件
名古屋地裁(平成26年4月23日)判決
◆遺失物横領等を理由とする懲戒免職処分
大阪市(懲戒免職)事件
大阪高裁(平成26年4月10日)判決
◆ 労働委員会の命令取消請求
北海道・北海道労働委員会事件
札幌地裁(平成26年3月31日)判決
◆ 時間外割増賃金等の支払請求
アドホック建物事件
東京地裁(平成26年3月28日)判決
◆ 試用期間満了後の解雇無効地位確認請求
ユーグロップ事件
大阪地裁(平成26年3月27日)判決
◆ 求人票の内容に基づく未払賃金等支払請求
貴光事件
大阪地裁(平成26年3月25日)判決
◆ 中学校長の飲酒運転事故と退職手当不支給処分取消請求
堺市・堺市教育委員会(退職手当不支給処分取消請求)事件
大阪地裁(平成26年3月24日)判決
◆ 個人情報漏えい等の損害賠償請求
東京ビジネスサービス事件
東京地裁(平成26年3月7日)判決
◆ 管理監督者該当性と時間外割増賃金支払請求
フロントサイドコミュニティー事件
東京地裁(平成26年3月5日)判決
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