労働判例ジャーナル31号(2014年・10月)
■注目判例
NHK受信料集金人の労基法・労契法における労働者性
日本放送協会事件
神戸地裁(平成26年6月5日)判決
■ポイント
本判決は,日本放送協会(NHK)の放送受信料の集金及び放送受信契約の締結等を内容とする有期委託契約を締結し,「地域スタッフ」と呼ばれていた者の労働契約法上の労働者性が肯定された事案として注目される。というのは,NHKの「地域スタッフ」をめぐる労基法・労働契約法の労働者性を争った裁判例は,これまでほとんど労働者性を否定するものであったからである。最近でも,NHK前橋放送局事件(前橋地判平25・4・24)は,スタッフの労組法上の労働者性を肯定したものの,労働契約法上の労働者性を否定している。
労組法上の労働者については,INAXメンテナンス事件最判(最3小判平23・4・12)などの三つの最高裁判決以降,労組法上の労働者を労基法・労契法上の労働者よりも広く解釈する方向がほぼ確定している。これは,これらの最判以前の下級審において,労組法上の労働者を労基法上の労働者に接近させて狭く判断する傾向を正したという点で大きな意義を持っていた。しかし,労契法・労基法上の労働者性判断に関する判例の状況が多様な就労者のうち労契法・労基法上の労働者とすべき者を十分にとらえきれていない可能性は否定できないところであった。このようななかで登場した本判決は,就労者の具体的状況に即して判断され,労働者性の規範的判断のあり方に一石を投ずるものとなるであろう。
年間購読料:29,700円(27,000円+税)※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です |
目次
◆ NHK受信料集金人の労基法・労契法における労働者性
日本放送協会事件
神戸地裁(平成26年6月5日)判決
◆ 運転手の雇用契約に基づく未払賃金等支払請求
セルティ事件
東京地裁(平成26年7月16日)判決
◆ 代表取締役らの暴行等による損害賠償等請求
御簾納会計事務所事件
東京地裁(平成26年7月11日)判決
◆ 派遣労働者と派遣先との雇用関係
資生堂(アンフィニ)事件
横浜地裁(平成26年7月10日)判決
◆休職の原因たる疾病の業務起因性
社会福祉法人県民厚生会事件
静岡地裁(平成26年7月9日)判決
◆懲戒解雇の有効性の判断と地位確認請求
ザ・トーカイ事件
東京地裁(平成26年7月4日)判決
◆ 大学教授の地位確認等請求
学校法人越原学園事件
名古屋高裁(平成26年7月4日)判決
◆ 適応障害発症に対する業務起因性
国・京都下労基署長事件
京都地裁(平成26年7月3日)判決
◆ 従業員の退職と解雇予告手当請求
築地ネットワーク事件
東京地裁(平成26年6月30日)判決
◆パワハラに対する慰謝料等請求
社会福祉法人大阪府障害者福祉事業団事件
大阪地裁(平成26年6月27日)判決
◆労働者の自殺に基づく会社等への損害賠償請求
岡山県貨物運送事件
仙台高裁(平成26年6月27日)判決
◆ 会社の安全配慮義務とじん肺損害賠償請求
三井金属鉱山・神岡鉱山(じん肺損害賠償請求)事件
岐阜地裁(平成26年6月27日)判決
◆ 解雇の事由と地位確認等請求
ダイトク事件
大阪地裁(平成26年6月26日)判決
◆ 自衛官に対する懲戒免職処分取消請求
国・陸上自衛隊中部方面総監事件
大阪地裁(平成26年6月25日)判決
◆ 退職金規程又は労使慣行に基づく退職金支払請求
太田酒類事件
大阪地裁(平成26年6月19日)判決
◆ 元取締役の未払報酬等支払請求
森田運送事件
大阪地裁(平成26年6月13日)判決
◆ 精神障害発病と業務起因性
国・名古屋北労基署長(精神障害発症)事件
大阪地裁(平成26年6月11日)判決
◆ 酒気帯び運転の市職員の免職処分取消請求
熊本市職員(懲戒免職処分)事件
福岡高裁(平成26年5月30日)判決
年間購読料:29,700円(27,000円+税)※送料無料。労働判例ジャーナルは労働法EX+をご契約の方に毎月発行される月刊誌です |